「VTuber×音楽」文化を先導するバーチャルトラックメーカー・ミディに聞く“ルーツと現在地”
ーー「ミディ」という存在でこの業界で伝えていきたいことはなんですか?
ミディ:音楽の楽しさを伝えていきたいと思い、作曲動画を作っているところはあります。作曲って、どうやっていいかわからないじゃなないですか。ただ、みんな自分の中にそれぞれの世界を持っているし、そういうのを表現するハードルが下がれば良いなと思っているんです。
ーー実際にミディさんの放送や動画を見て作曲を始めた人もいそうですね。
ミディ:結構いますよ! 「挫折して1回やめちゃったんですけど、放送見てまたやろうと思いました」という声も多いので、個人的にも嬉しいです。あとは、そういう放送をやって以降は楽器メーカーの方たちに声をかけていただいて。この前はフランスのメーカーの人が機材を送ってきてくれて、なんで見てるんだろうと驚きました(笑)。
ーー音楽をやっていく上で大事なことってなんだと思いますか?
ミディ:この業界に来て思ったのは、常に変化していかなくちゃいけないということです。ずっと同じものを続ける人もいますし、新しいものを求めていく人もいますが、自分はどちらかというと新しいものが好きなので、音楽以外でも興味のあるゲームやテクノロジーなど、新しいものには常にアンテナを張っています。
ーーミディさんにとっての「VTuber」ってなんですか?
ミディ:「VTuber」とは? と考えた時に、VRや新しいものを使って何かをするというイメージは常にあって。自分の中では仮想空間で活動できるからこそVTuber、という認識です。
ーー今後の活動における目標があれば教えてください。
ミディ:今はボーカリストを一人立てて一緒に活動していきたいと思っています。一人だとやはり限界があるので、ボーカリストやイラストレーターとチームを組んで活動していきたいとも思っています。一人での活動は、自分の音楽だけをひたすら考えるだけでいいので気が楽な部分はあるんですけど、それだと限界がどうしてもあるし、自分の中にあるものだけしか作れないという弱点もあります。海外だとコライトという文化がすごく流行っていて、ボーカリストや音楽プロデューサーがチームで集まって曲を作るのが当たり前になっているので、そういった作り方を通して自分の可能性を広げていきたいです。
ーー今後一緒にやってみたいボーカリストやクリエイターはいますか?
ミディ:それを今探している段階ですね。公募もしていますし、何人かいい人を絞れてきてはいるので、これからどんどんやっていくと思います。MVを人に頼んでわかったんですけど、得意分野は人に任せた方がいいなと思いました(笑)。
ーー埋もれてしまっている逸材がたくさんいる業界だと思うので、ぜひ素晴らしい逸材を発掘してください。
ミディ:この界隈って、プレイヤーが多くなったことで、埋もれてしまう人たちも増えています。どの業界でもいえるんですけど、いいものを作ってれば絶対広まるというわけではなくて、それ相応の自己プロデュース能力が必要になってくると思います。それがあっても埋もれてしまう人も一定数いるので、自分はそういう人たちを見つけて一緒にやっていけたらなと思います。当たり前のことなんですけど、VTuberがまだ100人くらいの時は逸材を見つけやすくて、すぐ目立って頭角を現していたんですけど、今は自らがアンテナ張ってディグっていかないと巡り会うことが難しいからなおさらですね。
ーー今後ワンマンライブをやることはありますか?
ミディ:自分はまだ早いかなと思ってます。一年に一枚アルバムをリリースはしているんですが、もうちょっと曲を出したいですね。
ーー楽曲数は多いという印象なんですが、それでも足りないんですね。
ミディ:そうですね。「コンピューターミュージックガール」や「ハイカラ浪漫」なんかは自分の中で跳ねた曲だなと思うんですけど、そういう曲をもっと出したいです。それがたくさんできたらライブをしてもいいかな(笑)。やはりリアルのアーティストと比べると、自分ってまだまだ弱いなって思うので。リアルのアーティストと対等になれるまでの力をつけたいというのが自分の中での課題です。VTuberはあくまで手段であって目的ではなく、自分を表現するツールの一つという考え方なので。
ーーVTuberを目指している人や、音楽活動を始めようとしている人にメッセージをお願いします。
ミディ:とりあえずVTuberになることを目標にしたらダメだと思います。作曲の話でもそうなんですが、その職業になることだけを目標にすると、なった後に自分が何をしたいのかわからなくなっちゃうので、それだけはオススメしません。自分の好きなものをとにかく追求する、自分が好きなものってなんだろうって一生懸命考えることが1番大事だと思います。作ったものを見れば、「この人ってこれが好きなんだな」とわかるじゃないですか、それが出てないとつまらないなと思ってしまう可能性があるんですよ。作り手の好きなものが伝わる方が共感してくれることも多いし、そこだけは絶対意識して、VTuber活動や音楽活動をやっていってほしいです。