アニメ・ゲーム業界のAI活用事例の全体像 あらゆるユーザー体験をサポートする自動生成の技術
ゲーム業界のAI活用事例の全体像
大野:ゲーム業界におけるAI活用事例については、売上の増加に貢献するもの、コストの削減に貢献するものに分類してお話したい。売上の中ではゲーム内のコンテンツを改善するもの、もしくはゲーム外のコンテンツでアプローチするものに分類した。
ゲーム内では、勝率予測、ゲームサポート、ユーザーへのインセンティブ設計を行うものに分けた。非ゲームコンテンツとしては、ユーザー数の増加、単価向上に分類しており、特にユーザー数の増加に関しては、プッシュ通知最適化のための設計の事例がある
コスト削減としては、制作側の自動コンテンツ生成とテスト自動化があるが、自動コンテンツ生成は先ほどのアニメ生成と重複するため、主にテスト自動化に関して話す(こちらも全て話すのは難しいため、勝率予測、戦術レコメンド、離脱予測、テストプレイの自動化のみ扱う)。
勝率予測
大野:現時点でのプレイヤーの実力からスキルレベルを判定、もしくは持っているキャラクターの特性を踏まえて、特定のプレイヤー同士のマッチングに対して勝率を予測する技術。ゲームによって何を元にユーザーのスキルレベルを判定すべきかは変わってくるが、これまでの戦績、使用しているキャラクター、キャラクター同士の相性をインプットすることが多い。
これをどのように活用していくのかというと、オンライン対戦ゲームのユーザー同士のマッチングにおいて、勝率がギリギリ同じになった方がユーザーがゲームをより楽しめるため、同じランクのユーザーと当たれるようなマッチングを行うことでリテンションを改善している。
戦術レコメンド
大野:あらゆるパターンを学習して、戦術を覚えたAIを作成し、ユーザーに対して、「こういうキャラクターでこういうパーティーを組むのなら、このキャラクターも追加したほうがいい」、または「今この戦況であれば次にこのアクションを取るべき」などの、ユーザーが取るべき戦略のヒントやアドバイスをAIによって出していく技術。ユーザーの学習をゲーム側からサポートしていくことで、特に初期のユーザーが戦術を理解してより楽しめるようになり、ゲームにハマっていくように設計することができる。
離脱予測
大野:これもユーザーの活動予測や行動ログを踏まえたもので、例えば直近1週間でユーザーが離脱してしまう可能性を予測していく。離脱を防止するためにユーザーが欲しそうなアイテムを増やしたり、インセンティブを付与したりしていく場合、予測の精度が低いと、ユーザー全員に一斉に配布したりしてしまうことになる。もともと課金しそうだったユーザーに対して配布してしまうと、売上も下がってしまうため、高い予測精度で必要最低限のユーザーに対して離脱を防ぐ施策を備えることが必要である。
テストプレイ自動化
大野:あるステージやイベントを新しく開設する場合、適切な難易度になっているかがゲームの面白さでは重要になってくる。そのため人間がテストプレイしながら、勝率がどれぐらいになるか調整していく必要があるが、全てのステージを全てのキャラクターでテストプレイすると、膨大な時間がかかることになるため、AIによる自動化が進められている。新しいステージを作ってAIにプレイさせて勝率を計り、パラメーターの調整繰り返すことで、難易度調整のプレイを大幅に時間削減できる。テストプレイの高速化、低コスト化を実現するほか、適切な難易度のゲームをリリースすることに貢献する。
■真狩祐志
東京国際アニメフェア2010シンポジウム「個人発アニメーションの15年史/相互越境による新たな視点」(企画)、「激変!アニメーション環境 平成30年史+1」(著書)など。