アニメ・ゲーム業界のAI活用事例の全体像 あらゆるユーザー体験をサポートする自動生成の技術

アニメ・ゲーム業界のAI活用事例の全体像

 1月20日から22日、オンラインにて『アニメ×ゲームサミット2021 Wintter』が開催された。昨夏に初開催の『アニメサミット online for Business』から2回目となる当イベント。本稿では、Algoageの大野峻典氏(CTO)による出展企業セッション「AIが創る、アニメ・ゲーム業界の最先端」から一部を記す。

 作品としては、アニメとゲームは近しくなってきたものの、若干イメージされるものが異なっている。ただAIの活用としては、作品の制作においてもサービスの運営においても、ほぼ同じであるのが改めて分かるだろう。

アニメ業界のAI活用事例の全体像

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大野:アニメ業界におけるAI活用について、本セミナーでは大きく制作側での利用と放送側での利用に分けてお話したい。更に、制作側での利用を、絵・もしくは音声の制作に分類している。

 絵の制作については、更にAIによるイラスト・アニメーションの自動生成、仕上げの自動化、高解像度化の3つに分類している。

 放送側に関しては、ネット上でアニメを配信するプラットフォームにレコメンド技術が使われている(今回は全てを扱うわけにはいかないので、イラスト、アニメ、ペイント、レコメンドに関して特にお話したい)。

イラスト自動生成

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大野:新しいイラストを自動生成する技術で、例えば真ん中にある女の子のキャラクターは、この世に全く存在しないキャラクター。既存のイラストやキャラクターを大量にインプットすることで、AIが特定の画風を学習し、それに基づいて全く新しい類似のキャラクターを生み出すことができる。

 応用の仕方としては、例えば新しいキャラクターを作りたい時に、AIにより大量に自動生成することで効率よくアイディア出しを行うことができる。AIが生成したキャラクターをそのまま使うことも可能だが、細部の微調整をAIで行うのは少々難しくなってくるため、それをベースに人間のイラストレーターが若干修正して完成させる。イラストを描いていくプロセスの中で、大きく人の手間を削減できるところではないかと思う。

アニメ生成(中割り)

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大野:まず、中割りとは原画と原画の間の絵のことで、静止画の連続をアニメーションとして成立させるためのプロセスであり、現状は30分のアニメ制作に3000枚もの中割り作成が人の手によって行われている。そこで、AIが大量のアニメーションデータを学習することで、始点と真ん中の点と終点の3枚の原画をインプットに対して、フレームの間をつなぐような中割イラストを生成することができる。滑らかなアニメーションを実現するのが中割生成の技術となっており、滑らかさも調整することも可能となっている。

 利用方法としては、アニメーション制作時の中割り作業の代替だけでなく、静止画の広告をアニメーションに置き換えて、訴求力を上げるというようなこともできる。

アニメ生成~DeepAnime

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大野:中割は複数枚の静止画から間をつないで生成するというものだったが、DeepAnimeに関しては1枚の静止画から自動生成している。ただ現状、自動生成するものは目と口だけとなっている。活用事例としては、主にマンガ広告などがある。

 インプットとしてマンガの1コマを与えた時に、DeepAnimeを使うとキャラクターが話しているような広告ができるため訴求力の向上が可能となる。そのほかゲームの会話シーンなどにおけるアニメーション制作でも活用できる。

アニメ生成~AlgoPose

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大野:こちらはAIによって、実写の人間の体の動きをリアルタイムで認識する技術になっている。例えばVTuberが、カメラで撮影した自分の動きを簡単にキャラクターに変換することができる、ためVTuberの動画作成コストを大幅に削減することができる。その他、VRゲームにおいてプレイヤーの動きをゲーム内で再現する時に使う技術ともなっている。

ペイント

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大野:こちらは弊社の事例ではないが、イラスト生成における事例として。AIがキャラクターや背景の色の付け方を学習して、同じようなイラストに対して自動で色付けできる技術になる。過去のデータによって、特定の文脈、キャラクター、背景について、あるべき色付けを学習して、それらに基づいて色付け作業を自動化していく技術である。アニメの制作過程における色付け作業を大幅にカットすることができる。

レコメンド活用(DMM TELLERとの取り組み)

大野:レコメンド技術もアニメ業界で使える技術だと思う。例えばアニメ配信のプラットフォームだと、ユーザーの過去の行動履歴から、どのようなアニメやマンガが好みなのかを学習して、ユーザーが次に見たいコンテンツをパーソナライズしてレコメンドすることができる。これまでユーザーが見た作品をAIにインプットすることで、そのユーザーと似た行動をしているユーザーが他にいるのかを探し出し、類似ユーザーに人気の作品を次に見たくなる作品としてレコメンドしている。

 レコメンド自体はKPI(重要業績評価指標)の改善として定番の技術だが、弊社ではチャット小説と言われるような配信プラットフォームを持っているDMM TELLERとで、各ユーザーがホーム画面で何を見ているのか、各コンテンツを見終わった後に何をオススメするのかのレコメンデーションを開発している。実際プロジェクト内でKPIが数10%改善した。

 ホーム画面においては、ユーザーの過去の履歴に基づいて、類似ユーザーの行動履歴との差分から次に見たくなるコンテンツを予測してレコメンドする。あるコンテンツの読了画面においては、読み終わった作品に近いコンテンツを、「このコンテンツが好きなのであれば、こちらのコンテンツも好きなのではないか」といったレコメンドを行うことで、KPIの改善に貢献している。

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