コロナで大きく変化した、2020年のeスポーツ

コロナで変化した“eスポーツ”

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るった2020年。対戦ゲームの競技シーン、eスポーツの世界も激しい変化の一年となった。多くのイベントが中止や形式の変更を余儀なくされたが、これは一見そのような影響と無縁に思えるeスポーツシーンも例外ではない。

 コミュニティレベルのものはともかく、多くの興行主やゲームデベロッパーが主催する大会は、選手や運営スタッフそして観客が同じ会場に集うオフライン開催が一般的だった。春に緊急事態宣言が出てからは、選手たちがそれぞれゲーミングハウスなどの活動拠点から試合に参加するオンライン開催が多数を占めた。チケット収益やグッズ販売など直接的な影響はもちろん、飛び交う選手たちの報告や指示、場を盛り上げる実況解説陣、何より会場に詰めかけた観客たちの歓声やどよめきを欠くなど興行としての盛り上がり、そしてその様子を乗せることができない配信構成の難しさが課題となった。

 これに対応する手法として出てきたのが、仮想空間上にバーチャル会場を設営するものである。『League of Legends』の国内リーグ「LJL」や「RAGE」で実施され、バーチャルSNS「cluster」上の仮想空間に観客のアバターが集まった。実際の会場を仮想空間上に再現した場合には「導線が煩わしい」「VRゴーグルを通して見ると観戦モニターの解像度が足りない」などの問題があるものの、空間設計の工夫次第で新しい観戦スタイルを開拓する可能性を秘めている。(参考:「バーチャルを通して、一人ひとりが社会を変えられると感じてほしい」 クラスターCEO・加藤直人と考える“エンタメ×テクノロジーの可能性”

 緊急事態宣言が解除された夏以降は、感染対策を施した上で無観客で開催される事例も増えた。『レインボーシックス シージ』の国内大会「レインボーシックス Japan Championship 2020」は無観客ながら決勝のパフォーマンスでは歌手のLiSAが新曲を初披露。本配信以外にも初心者向けの解説を加えた別配信も同時におこなうなど、工夫の見られる構成で開催された。

レインボーシックス Japan Championship 2020 FINAL ROUND アフタームービー

 リモートワークの活用など新しい生活様式に対する適応が進む中、配信コンテンツへの需要の高まりも見られた。競技シーンと離れたところではあるが、プロゲーミングチーム・Crazy Raccoonがインフルエンサーを招いて主催する「CRカップ」は、特にApex Legendsで開催された際には毎回10万人規模の視聴者を集める盛況ぶりを見せつけた。参加者それぞれの人気はもちろん、事前の練習試合の様子を各参加者が配信するなど、大会までのストーリー作りで成功した事例と言える。「CRカップ」とはスケールは違うものの、例えば配信サイトmildomでおこなわれるプロゲーマーの配信にも(おそらく課せられた配信ノルマの消化なのだとしても)少数ながら固定の視聴者が集まる様子も見られ、そうした日常的な営みが熱心なファンの形成に繋がっていくと個人的には考える。

 配信需要の高まりに合わせて、2020年リリースされたeスポーツタイトルの中でも大きな成功を収めたと言えるのが『VALORANT』だ。6月のリリース以前のクローズドベータテストではTwitchでの同時視聴数170万人突破。日本では6月に「RAGE」が主催した招待制の公認大会が約4万人の視聴者を集めた。国内では競技シーンを志向するプレイヤーが多かったものの大会に恵まれなかった『Counter-Strike: Global Offensive』や『Overwatch』から多くのプロゲーマーが転向。結果的にこのジャンルのゲームとしては大きなシーンを形成するに至っている。様々な興行主による大会の他に公式大会も開催され、2021年からは世界大会の開催も予告されている。

VALORANT Champions Tour 紹介

 一方、より大きな対応を迫られたのが渡航制限の問題であった。年間を通じて選手たちが世界中を転戦していた『ストリートファイターV』の「CAPCOM PRO TOUR」は複数のオンライントーナメントへと形式の変更を余儀なくされた。『League of Legends』の世界大会「Worlds 2020」では各地域の選手やスタッフに2週間の隔離期間が設けられた。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる