BitStar渡邉拓代表に聞く「YouTuberの現在と未来」 プロ市場化で変化する“クリエイターの出口戦略”とは

BitStar渡邉拓代表に聞く“YouTuberの現在と未来”

プロ市場化で加速するコンテンツへの投資

――2021年以降、YouTube/YouTuberというシーンはどんな展開を迎えると予想されていますか。

渡邉:プロ市場化がより進み、以前、芸能人がブログを持っているのが当たり前だったように、YouTubeチャンネルを持つことが当たり前になっていくと思います。同時に“コンテンツのプロ化”というところで、YouTuberもコンテンツに投資していかないと、勝ち抜くのは難しくなっていく。特に、すでにジャンルとして確立されているエンタメ領域では、動画自体をリッチにすることもそうですが、チームを作ることが重要になっていくでしょう。専門の作家を入れて、海外の動向もチェックしつつ、いかに旬で、これから流行するネタを取り入れられるか。もちろん、トレンドは移り変わっていきますし、例えば流行のゲームタイトルが変われば、そのなかで自然と台頭するプレイヤー/動画クリエイターも出てくると思いますが、定常的には、コンテンツに投資していく、という意識が重要になるのは間違いありません。

――なるほど。すでに成熟したジャンルにおいては、ますますレッドオーシャン化していくなかで、だからこそ先ほどのように、YouTube以外の選択肢を模索する必要も出てくるということですね。

渡邉:そうですね。活動の場をYouTube以外のプラットフォームに広げていったり、あるいはマネタイズの幅を広げていくチャレンジを徐々にしていったり、コアファンとの繋がりを強化したり、ということが今後さらに重要になっていくだろうと。もちろん、趣味、スポーツ、ビジネスなど、まだ確立されているとは言えないジャンルについては、まだまだチャンスがあり、従来のようにYouTubeでのチャンネル拡大を目指す、という方法論が通用すると思います。

 一方で、プロダクションとしては、成熟してきたなかにこそ活路もあると考えています。つまり、これまでは個の力が強かったところが、今後はより企業によるプロデュースの価値が高まっていくだろうと考えます。例えば、ソニーミュージックとJYPの共同プロジェクトであるNizi Projectは、YouTubeでも非常に大きな話題となり、大成功を収めました。このように企業にしかできないコンテンツをプロデュースし、育てていく、ということが、プロダクションとしては重要になっていくと思います。


――そうすると、2021年以降、もしかしたらBitStarさんとエンタメ系の企業が組んで、大きなプロジェクトをスタートさせる……ということもありえると。

渡邉:そうですね。さまざまなメディアと組んで、スターを創出するようなコンテンツもあるかもしれません。また、先ほど申し上げたように、マス/リアルからデジタルとビジネスモデルが移行するなかで、音楽領域などは今後も大きく変わっていくでしょうし、YouTubeで注目を集める音楽番組がスタートしたら、出演したいアーティストも多く、集客装置としても優れたものとして、業界的にも盛り上がるかもしれません。宮迫博之さんと中田敦彦さんのYouTube番組『WinWinWiiin』も話題ですが、今後こうしたリッチなコンテンツが増えていく可能性は大きいと思います。いま、弊社の制作チームにも、テレビ局をはじめとするマスメディア出身の人材が増えてきているという状況がありますし、さまざまな仕掛けを考えているところです。

“好きなこと”以上に“得意なこと”を

――必ずしも若い世代に限らず、YouTubeで表現をしてみたい、という人は増えていると思います。ジャンルによってはまたまだ抜きん出るチャンスがある、というお話もありましたが、多くのクリエイターを見てきた渡邉さんからアドバイスがあるとすれば、どんなことでしょうか。

渡邉:ひとつは、“好きなこと”というより、どちらかというと“得意なこと”、あるいは”世の中に求められること”を考えるべきかと思います。「好きなことで、生きていく」という言葉がYouTubeを象徴するキャッチコピーになりましたが、プロ市場化しているなかで注目されるには、自分が得意なことと、マーケットに求められていることの接点をいかに見出すかが重要になる。一見難しいことのように思えるかもしれませんが、自分は需要がないと思っていることでも、「こんなことが求められるんだ!」という、本人には意外なヒットを生むことは往々にしてあります。

――なるほど。逆に、もともと売り物になる知識だと一般的に思われているものはすでに多くの人が発信していますし、自分でも気づいていない“得意なこと”に潜在的な需要を探った方がいいと。

渡邉:そうなんです。例えば、元野村証券の営業マンだった宋世羅さんは、営業をしていた際の経験談を語った動画が非常に多くの再生数を獲得しています。本人は居酒屋トークにしかならないと思っていることでも、多くの人の関心を集める話題というのは無数にあり、それを自己認識できるかどうかがポイントです。“得意なこと”は無意識でやっていることが多いですし、人から面白がられた経験を思い起こしたり、周囲の人に聞いたりしながら、自分が生み出せるコンテンツを考えていくのがいいのではないでしょうか。

――最後に、2021年以降の展望も聞かせてください。

渡邉:これからのインフルエンサーに向けたプラットフォームを準備しています。そのなかで仕事の受発注が自動的にできたり、著作権フリーの音源の提供や、確定申告のサポート、あるいは家を借りるときの与信管理など、細かなところまでトータルにサポートできるようにしようと考えています。そうしてよりクリエイティブな活動に集中できる環境を作ることでこれからのインフルエンサーを応援していきたいです。

 また、企業としてもコンテンツに投資していきたいと考えており、大型の企画もいくつか準備中です。そしてその先、クリエイターの出口として、ブランド作りや、リアルな場の提供などにも力を入れていきたいと考えています。特にD2Cにはかなり力を入れていこうと考えているので楽しみにしていてください。

■書籍概要

書名:『動画マーケティングの新常識 〜最強のYouTube活用術〜』
定価:本体990円(税込)
発売日:2020年12月25日発売
著者:渡邉拓
発行元: ニューズピックス

目次:
第一章 YouTubeを「戦略的」に配信するための基礎知識
第二章 最短距離を進め。YouTube「PDCA」の回し方
第三章 伸びない原因はこれだ。YouTube配信の“落とし穴”
第四章 YouTube「大ヒット動画」から何を学ぶべきか
第五章 YouTubeにおけるマネタイズ戦略

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