BitStar渡邉拓代表に聞く「YouTuberの現在と未来」 プロ市場化で変化する“クリエイターの出口戦略”とは

BitStar渡邉拓代表に聞く「YouTuberの現在と未来」 プロ市場化で変化する“クリエイターの出口戦略”とは

 コロナ禍の影響もあり、2020年のエンタメシーンでさらなる飛躍を遂げたYouTube。有名芸能人のチャンネル開設が相次ぎ、若年層中心だった視聴者層にも変化が生じるなど、YouTuberにおいても、そのマネジメントやプロデュースを手がけるインフルエンサーマーケンティング企業においても、大きな転換点を迎えている。

 2021年以降のYouTuberシーンはいったいどう推移するのか。市場はどう変化し、そのなかで抜きん出るのはどんなクリエイターなのか。広告収益を右肩上がりで伸ばし、有名クリエイターの参入も相次ぐなど、存在感を高めているBitStarの代表取締役社長 CEO、渡邉拓氏に聞いた。 (編集部)

渡邉 拓(わたなべ・たく)
2011年 慶應義塾大学大学院 理工学研究科卒。新卒でスタートアップに入社し、新規事業の立ち上げに従事。独立後、友人のYouTuberを支援したことを転機としてBitStarを創業。累計約30億円の資金調達を実施し、コンテンツ産業を担うメガベンチャーを作るべくクリエイタープロダクション・コンテンツスタジオ・VTuber・インフルエンサーマーケティング事業を展開。デロイトトーマツ主催「日本テクノロジー Fast 50」に2年連続で選出。

変わりゆくYouTuberの“出口戦略”

――2020年はコロナ禍により各業界に大きな変化がありましたが、YouTubeを中心としたインフルエンサーマーケティングの分野には、どのような影響があったでしょうか。

渡邉拓(以下、渡邉):YouTubeに絞ってお話ししますと、コロナ禍の影響は3月から徐々に出始め、4月から5月の緊急事態宣言があったなかで、私どもの計測では昨年対比で70%ほど、動画再生数が上がるなどマーケットが広がりました。一方で、芸能人の方のテレビ出演やリアルな営業活動が止まったことで、YouTubeへの参入が加速し、各チャンネル/クリエイターに少なからず影響を与えています。

 クリエイターにとって良い面からいうと、芸能人の方々の参入でYouTubeが活性化し、年齢層も含めて視聴者の幅が広がったことで、大人向けの動画、ニッチな領域のコンテンツも受け入れられやすくなり、これまでは日の目を見なかったクリエイターにもチャンスが広がっています。

 一方で、競争が激しくなれば当然、埋もれるチャンネルも出てくることになり、プロダクションやエージェンシーとしては、プロデュース力がより求められてきていると考えています。これまではクリエイター個人の力で伸びることができていたところが、それがなかなか難しくなり、企業のプロデュース力がより求められる時代になってきました。

――なるほど。トップYouTuberは高い再生数を維持している一方で、目に見えて落ち込んでしまっているチャンネルもありますね。

渡邉:もともと人気があったチャンネルが数字を落としてしまう、というケースも散見されます。コロナ禍や芸能人の参入に限らず、世の中のトレンドもあり、浮き沈みはどうしても出てきますから、活動をYouTubeだけに閉じず、他のプラットフォームも含めて活動していく、あるいはファンベースをしっかり作り、多種多様なビジネスに展開していくことも重要です。またストーリー性をもって企画をプロデュースしていくことも重要になってきます。そうした部分は個人で精査・分析して戦略を立てるのが難しいところがあり、企業としてきちんとサポートしたいと考えています。仮に人気に陰りが出てしまっても、100人、1,000人という単位の根強いファンがいれば、クリエイターとしていい活動を続けていく道筋はいくつもある。いまは、そういうことを考えていくタイミングなのかなと思っています。


――YouTubeでチャンネルの拡大を目指すだけでなく、例えばTikTokに向いているクリエイターもいれば、ライブ配信に向いているクリエイターもいて、それぞれの可能性を精査していくと。

渡邉:そうですね。短期的な収益だけを考えれば、YouTubeに力を尽くす方がいいかもしれませんが、例えば本の出版でブランディングを高めたり、テレビやラジオなどマスメディアへの積極的な出演で一般認知度を高めたり、逆にリアルイベントや物販で少数だがコアファンを醸成していくような先を見据えた活動をしていく必要があります。

――いわゆる“芸能人YouTuber”においても、個々の特性に応じて影響力や収益力を最大化できるプラットフォームは変わってきそうで、今後、芸能プロダクションにも同様の課題が出てくるかもしれませんね。

渡邉:そういう構造の変化に対応する必要は出てくると思います。そもそものビジネスモデルとして、例えばかつての音楽業界なら、メディアを通して宣伝して、ライブやCDの販売で収益を得て、プラスアルファとしてYouTubeでMVを流す……というように、あくまでマスやリアルがメインでデジタルはおまけ、という構造が一般的だったと思います。しかし、今はそうではない。その点、私たちはまずYouTubeやSNSなどデジタルな領域で収益化と同時にマーケティングを行い、そこでファンベースを作って、リアルのイベントや物販というビジネスにもつなげていく、という逆の発想でスタートしており、ノウハウを蓄積していることが強みになると考えています。

インフルエンサーマーケティングの“脱属人化”へ

――コロナ禍でYouTubeでも広告単価が下がった、という話はよく聞くところですが、クライアントの広告周りの影響についてはいかがでしょうか。

渡邉:確かにクライアント一件あたりの単価は下がっている部分がありますが、BitStarはありがたいことに案件数が増えているため、広告費による収益は右肩上がりです。例えば、事業のメインとしていた対面販売ができなくなってしまった企業が、ネットを通じたビジネスを強化するために、広告予算を相性の良いYouTubeに回す、ということもありますし、全体のボリュームは減っていても、配置が変わってウェブに予算が回ってくる、ということもありますね。

――2020年8月に行われたショッパーズアイ社のリサーチで、「BitStar Ads」が「マーケティング担当者が選ぶ『おすすめ』と思う、インフルエンサーマーケティングサービス」「『成果に繋がる』と思う、インフルエンサーマーケティングサービス」の2部門で1位になりました。限られた広告予算の取り合い、という状況もあると思いますが、YouTubeの広告案件においては、どんなことに留意していますか。

渡邉:まずはクライアントの課題解決をしっかり考えることです。単純に人気クリエイターをキャスティングすればいいということではなく、課題解決にはさまざまなソリューションがあり、YouTuberのタイアップもあれば、別の広告商品もあります。「このクリエイターをアサインしていくら」だけでは付加価値は低いので課題解決に向き合い企画を立て、また事後にも詳細な分析とレポーティングで次につなげる、ということも重視しています。

――さて、2020年はBitStarにJJコンビ、えっちゃんねる、JULIDYなど、人気クリエイターが続々加入したことも話題になりました。

渡邉:実績のあるクリエイターに、BitStarのサービスに価値を感じていただけたのが素直にうれしいですし、私たちはこれから成長していこうとしている企業なので、ある意味では所属というよりパートナーとして、一緒に盛り上げていきたい、という感覚です。

――クリエイターにもインタビューさせていただきましたが、自分たちに必要なサポートが細やかに受けられる、ということに価値を感じたというお話が多かったように思います。

渡邉:これはコロナに関係なくですが、私たちとしてはマネージャーとは別の組織として「機能組織」(機能別組織)というものを志向して、各機能のスペシャリストを集める組織を作ってきました。例えば、チャンネルの分析が得意な人、イベント運営が得意な人、DtoCのブランド作りが得意な人、マスメディアのキャスティングが得意な人など、各分野にスペシャリストを揃えているんです。タレントのマネジメントというと、ひとりの敏腕マネージャーがスケジュール管理をして、仕事をとってきて……というイメージがあるかもしれませんが、BitStarは「マネージャーはプロデューサーであれ」という方針で、各クリエイターが目指す将来像に合わせて、それに必要なスペシャリストをプロジェクトチームに入れてチームでサポートするという形をとっています。

――渡邉さんが掲げてきた「インフルエンサーマーケティングの脱属人化」というテーマにつながるお話ですね。

渡邉:そうですね。マネージャー個人の能力に頼ってしまうと仕事が属人化して、サービスにばらつきが出てしまいます。機能組織の体制が整っていくなかで、クリエイターの満足度も上がっていると感じています。

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