2020年を席巻した石橋貴明のYouTube 人気の理由は「コンプラ破壊」ではない
さまざまな人物がYouTuberデビューした2020年。その中で、トップクラスの“大物”といえば、石橋貴明だろう。
6月19日からスタートした「貴ちゃんねるず」は、1本目の動画「石橋貴明、58歳。YouTube、はじめるでしょ。」を皮切りに、毎週月曜・木曜21時を“レギュラー放送”として新作をアップしてきた。
さらには生配信にも挑戦。石橋貴明の「誕生祭」や、巨人対ソフトバンクの日本シリーズ第2戦の「生解説」などを届けた。
最初に大きな話題となったのは、開始1ヶ月記念として行われた「清原和博3日連続スペシャル」。『とんねるずのみなさんのおかげでした』の名物コーナー・男気ジャンケンの体裁を取り、清原和博の甲子園時代や覚せい剤事件について語り合う動画を3日にわたってアップした。
刑務所には入っていない清原和博にたびたび「出所おめでとう!」とイジるなど、いわゆる“石橋貴明らしさ”を見せた動画は、3本合計で1500万再生を突破(12月25日現在)。他のYouTubeチャンネルでも、清原和博のゲスト出演回は高い再生回数を叩き出しているが、貴ちゃんねるずの数字は群を抜いている。
12月26日には、清原和博が立ち上げたYouTubeチャンネルにゲスト出演。どちらのチャンネルもマッコイ斉藤がディレクターを務めており、2人の共演は今後も続きそうだ。
石橋貴明といえば、近年厳しくなったと言われるコンプライアンスの対極的存在として語られることが多い。YouTube参戦の際も「テレビではできないことをやってほしい」「コンプラでガチガチのテレビに対抗してほしい」と、型破りな内容を期待する声が多かった。
しかしYouTuberデビューから6ヶ月、彼への評価を見ると、コンプラや型破りとは違う、彼の真面目さや実直さに光が当たっているのではないか。象徴的な例が、安定した人気を誇るシリーズ企画「東京アラートラン」だ。
コロナ禍に苦しむ飲食店を石橋貴明が訪問し、お店自慢のメニューを食べて評価する内容。初期にアップした動画はすでに200万再生を超えているが、シリーズ歴代トップの再生回数を誇るのは、まだ11月19日にアップされたばかりの動画。アラートラン第5回だ。
こういったYouTubeのシリーズ企画は、回数を重ねるにつれて再生数が下がるのが一般的。単発企画なら爆発的に再生数が伸びることはあるが、同じ路線の動画は徐々に減る傾向にある。加えて、数ヶ月前にアップされた動画は、その間に積み重ねた再生回数のハンデがある。
その中で第5回がトップになったのは、この企画の人気が日に日に高まっている証。貴ちゃんねるずが、初期の話題性だけでなく着実にファンを広げていることがわかる。
ではアラートランの何が人気なのか。それは石橋貴明の破天荒さや型破りな展開ではなく、真摯に料理を試食し、時には厳しい評価をしながら、きちんとお店にアドバイスする真面目さだ。
第5回で訪れた店でも、最初の2品の評価は高くない。しかしその後、当日急きょ出した「わさび飯」を食べて評価が変わった。使われていたお米は、山形の「つや姫」。何とか喜んでもらうと提供したものである。その結果、最高評価を獲得。この企画では、こういったお店の心意気や頑張りが好まれるのだ。あまりイメージのなかった、石橋貴明の“温かさ”がウケている。
清原和博との対談でも、彼の真面目な一面が出ていた。尊敬する伊集院静氏の本を読み、一度好きになった人がたとえ人を殺したとしても「最後まで応援してあげなきゃいけない」と語る。驚くほど実直な思いを打ち明けた。