連載:ゴールデンボンバー歌広場淳の「続・格ゲーマーは死ななきゃ安い」

歌広場淳が語る“おじリーグ”参戦の意義「意味がないことをひたむきにやるのが、何よりもエンターテインメント」

 大のゲームフリークとして知られ、ゲーマーからの信頼も厚いゴールデンボンバー・歌広場淳による連載「続・格ゲーマーは死ななきゃ安い」。今回は、“格ゲーおじさん”たちがプライドをかけて戦う「おじリーグ」に参戦した歌広場に、その経緯と当日の様子を振り返ってもらった。かつてのゲームセンターを再現したような、強烈な煽り合いも行われるおじリーグ。“芸能人・歌広場淳”としてのリスクを度外視したその挑戦は、“格闘ゲーマー・歌広場淳”あるいは“人間・歌広場淳”の明確な価値観が表れていた――。(編集部)

体に傷ひとつないまま死ぬのが嫌だった

 11月23日、オンラインで配信された格闘ゲーム大会「おじリーグ」に参戦しました。今回で3回目を数える「おじリーグ」は、トッププロが集まるのではなく、「プロ」なんて想像もできなかった時代から格ゲーが好きで、いまはシーンを裏方として支えているおじさんプレイヤーたちがプライドをかけて争う、“不要不急”極まりない大会。もともとゲームセンターの煽り合いのなかで育ってきた人たちとの死闘で、もし負けることがあれば、とにかくひどい仕打ちを受けます。9人での総当たり戦の結果、優勝して賞金が出るわけでもなく、最下位になろうものなら信じられないほど煽られるという、リターンよりリスクがはるかに大きい戦いなんです。

 それではなぜ、僕がそんな「おじリーグ」に参戦したか。えらそうに聞こえたら申し訳ないですが、僕はここで名前を売る必要もないし、これをきっかけにゲームの仕事がほしいとか、そういう動機もない。「おじリーグ」にあるのは、勝った者に与えられる“勲章”ではなく、負けたものにつけられる“傷”です。ただ、僕が大好きな『ファイトクラブ』という映画のなかで、「エキサイティングな人生を送りたかったら、お前自身がエキサイティングになれ」という趣旨の台詞があり、ふと、僕はこれまでもそうやって生きてきたんだということを思い出したんです。きっと体に傷ひとつないまま死ぬのが嫌なんでしょうね(笑)。

【スト5】#おじリーグ 3 前半戦アーカイブ(2020/11/23)

 さて、おじさんプレイヤーといっても、10年、20年前は全一(全国一位)クラスだった人もいるし、普段からトッププロと対戦しているような猛者ばかり。僕は「一勝もできないかもしれないが、みっともなくやられて、見ている人の心を挫くようなことはしないぞ、どんなに厳しい状況でも絶対にギブアップはしないぞ」と、絶対王者アポロに挑むロッキーのような心境で、夜な夜な練習を繰り返しました。

 そうして迎えた当日、オープニングマッチは、前回の覇者であるeスポーツキャスターのアールさんと、僕の戦いに。これがまた緊張からくるミスの連発でしたが、1ヶ月弱、真剣に練習してきたなかで一度も起こらなかった「ダブルKO」が飛び出す熱戦に。結果としては負けてしまい、ゴールデンボンバーの鬼龍院翔がよく言う「練習は本番のように、本番は練習のように」という言葉が教訓として頭を巡りましたが、普段見られないものが見られるという、“鉄火場”の面白さも感じました。

 試合の具体的な内容は頭が真っ白でほとんど覚えていないのですが、印象深かったのは、格ゲーコミュニティの配信周りになくてはならない人気者・ハンサム折笠さんとの一戦です。試合中、折笠さんのコントローラーのコードが抜けてしまい、ゲームが一時停止の状態に。公式の大会であればそのまま再開することはありえず、リセットして再戦したり、過失のある方が負けとされたりするのですが、おじさんたちの大会ですから、審判の掛け声とともに、スタートボタンを押してそのままリスタートしましょう、ということに。

 その瞬間、僕は「前ステップ×2回 → 中足→大昇竜拳」という行動に出たんです。格闘ゲームプレイヤーからしたら、あまりに必要なさすぎて爆笑してしまうようなプレイングなので、詳しくない方は「前に出てもまず得することがない、様子見が安定のシチュエーションで“やりにいった”」と考えていただけたらいいのですが……。これは我ながら、プロとはまた違う価値を前提に動いている「おじリーグ」を体現した動きだったと思っています。

 しかしその後、有利な展開から負け……という試合を繰り返し、結果は2勝6敗。同じ勝利数で4人が並び、負け残り“決勝トーナメント”が開催されることになってしまいました。僕の相手は、直接対決で負けている、eスポーツフォトグラファーの大須晶さん。このとき、僕は「対策は変えなくていいが、とにかく気持ちで下がらない」ことを誓い、実際に様子を見ればいい場面で「前に出てからの投げ」を2回決めて、勝つことができました。最下位になり、不名誉すぎるあだ名で呼ばれ続けることにならなくて本当によかった(笑)。バラエティタレントにはあっても、格闘ゲーマーに「負けておいしい」という発想はないんです。

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