ノトーリアス・B.I.G.からTravis Scottまで 脈々と続く「ラッパーとビデオゲームの歴史」

ノトーリアス・B.I.G.からTravis Scottまで 脈々と続く「ラッパーとビデオゲームの歴史」

絶大な支持を獲得し、クロスオーヴァーを加速させた『Grand Theft Auto』

 ソニーのPlaystationも登場し、ビデオゲームが市場に完全に定着した90年代後半以降、ビデオゲームとヒップホップの共振はより強いものとなっていく。1999年にはWu-Tang Clanのメンバーが残虐格闘ゲームに挑む『Wu-Tang: Shaolin Style』が発売され、2004年には名門レーベルのDef Jamの名を冠した『Def Jam Vendetta』が登場し、DMXやLudacrisといった実在のラッパー達がプロレスを繰り広げている(日本版ではDABOとS-WORDも参戦)。「何故直接戦うのか?」という疑問が湧くところではあるが、その背景にはやはり『ストリートファイター2』や『モータルコンバット』の影響を感じることができる。だが、この頃まではあくまで「ラッパーがビデオゲームに出演する」といったある種の企画モノな側面が強かった。

 しかし、あるシリーズの存在が、ヒップホップとビデオゲームのクロスオーヴァーを更に上のレベルに引き上げることになる。それは、1997年にRockstar Gamesが第一作目を発売した『Grand Theft Auto』シリーズである。特に、シリーズにおいて初めてアフリカ系アメリカ人であるカール・ジョンソン(通称 : CJ)を主人公に迎え、2004年に発売された『Grand Theft Auto : San Andreas』は今なおシリーズ最高傑作と名高く、多くの人々に絶大な影響を与えた。法律を無視して広大なオープンワールドを暴れまわれる圧倒的な自由度、地元へ戻ってきた元ストリート・ギャングのCJがトラブルに巻き込まれながらも他のギャングや警察などとの様々な戦いを経てファミリーを立て直しながら成り上がっていくというストリート・ドリームを描いた物語、ユーモラスな言動と家族や仲間想いな性格でギャングでありながらも良心を感じさせ、時にはラップを歌い出すCJの魅力的なキャラクター、そしてカーラジオから流れてくるヒップホップやファンク・ミュージックなど、本作にはストリートで育った人々、ストリート・カルチャーに憧れる人々の双方にとって魅力的な要素がこれでもかと詰め込まれていたのだ。

 ヒップホップから強い影響を受けた『GTA』は、結果として多くのアーティストに影響を与えることにもなる。故人となった今でも絶大な影響力を誇るJuice WRLDも、自身のフェイバリットとして同シリーズの『Vice City』と『San Andreas』を挙げており、同シリーズにおける”死亡”を意味する言葉をタイトルに冠した「Wasted」という楽曲では〈Wasted, GTA love, bixxhes wasted〉というラインでGTAへの愛を歌っている(参考 : https://www.youtube.com/watch?v=ivcKceGfmLE)。

Juice WRLD – Wasted(feat. Lil Uzi Vert)

 また、Juice WRLDも参加したG Herbの「PTSD」(2020年)では、暴力に満ちた街の光景を歌う同曲の中で、Chance the Rapperが母親と共に銃撃事件を目撃し、沈黙の中でGamestop(米国のゲームチェーン)へ向かい『San Andreas』を購入した過去の記憶を綴っている。Futureや21 Savageといったラッパーとのワークスで知られる著名プロデューサーのMetro Boominも本シリーズと共に育ったことを語っており、シリーズ最新作の『Grand Theft Auto V』のサウンドトラックに自身の楽曲を収録できたことに強く感動していた。

 このMetro BoominとFutureによる「How It Was」を筆頭に、シリーズ最新作の『Grand Theft Auto V』では恐らく歴代ゲーム史上最も豪華でクールな楽曲が集結している。ヒップホップにおいては、Kendrick LamarやTravis Scottといった(当時の)若手から2PacやEasy-Eといったレジェンド中のレジェンドまで幅広く収められており、更にFlying LotusやFrank Oceanといったアーティストが自身のラジオ局を構え、彼らがキュレーションしたプレイリストをゲーム内で楽しむこともできる。『Grand Theft Auto』シリーズにおけるヒップホップ・カルチャーとの強い結び付きは、ビデオゲーム自体をよりクールな存在へと引き上げ、また、逆に多くの人々にとってのヒップホップ・カルチャーへの入り口としても機能していたと言えるだろう。

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