“女子高生の性事情”題材ドラマ『17.3 about a sex』は、エンタメ性と学びを両立させた良作だ

ドラマ『17.3 about a sex』レビュー

 初めての恋、初めての彼氏、初めてのキス……。高校生の日常は初めての経験や戸惑いに溢れている。学校に行けば人間関係に悩み、本気で恋をしては傷つき、手探りに情報を集めては間違ってしまうことだってあるだろう。しかしそんなかけがえのない時間を苦しい過去にしないためにも、性に関する知識は重要だ。

 9月17日から配信がスタートするABEMAのオリジナルドラマ『17.3 about a sex』ではそんな女子高生たちのリアルな性事情が描かれる。ここでの17.3とは17歳と3ヶ月という年齢を意味するが、それは同時に初体験の世界平均年齢でもある。字面的には非常にセンセーショナルなタイトルにも聞こえるが、実際の『17.3 about a sex』はティーンをターゲットとした性教育的意味合いの強い作品に仕上がっている。産婦人科医を医療監修につけ、非常に専門性の高い内容に触れつつ、その中で正しい知識を身に着けることができるような工夫がなされているのだ。

 高校生の性を扱った作品といえば『14才の母』(日本テレビ系)や『透明なゆりかご』(NHK総合)などが思い浮かぶが、両者はどちらかというと“行為後”に女性が受けてしまった傷の深さやそこから立ち直る過程にフォーカスされたものであり、性及び生についての深刻なメッセージが伝わってくる。それに対し本作は、性を特別なものではない日常と捉えつつ、主体性を持った女子高生の目線でキスの先のリアルをまさに当事者感覚で描いており、この“日常生活に溶け込む性”といった身近さこそが現実味を感じさせるポイントになっていると言えよう。

 物語は仲良し3人組の女子高生の日常を三者三様に描いている。現役Seventeenモデルの永瀬莉子、田鍋梨々花、秋田汐梨がトリプル主演を務め、女子高生の日常をみずみずしく体現する。第1話は、性に関する知識が浅く母親が買ってくれた下着を身に着けるような女子高生、清野咲良(永瀬莉子)の物語。第2話は誰のことも好きになったことがない原紬(田鍋梨々花)の性自認について切り込み、さらに第3話では恋愛体質の皆川祐奈(秋田汐梨)が恋多き乙女であるが故に見舞われるトラブルが描かれた。それぞれが全く違う恋愛スタイルではあるが、誰しもが「あれ?」と一度は悩むような題材を丁寧に深掘りしており、今現在、悩みを抱えるティーンにとって、問題解決を手助けすることにもなり得るだろう。

 さらに本作でトリプル主演を務める3名は、新進気鋭の若手女優としても注目株である。永瀬は現在放送中の『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(フジテレビ系)第1話にゲスト出演し、1型糖尿病の女子高生役を演じた。田鍋も『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命- THE THIRD SEASON』(フジテレビ系)など人気ドラマに出演、更には秋田も『3年A組 -今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ系)に出演しており、これからが期待される女優たちだ。そんな彼女らが真摯に「性」と向き合う芝居にも注目してほしい。また、新進気鋭の女優を支えるべく、咲良の母親役を演じるのが藤原紀香であり、母娘の織りなす人間ドラマも見どころとなる。さらには『オオカミ』シリーズから竹内唯人、藤枝喜輝も出演。どの世代が見ても楽しめ、かつ学びのある作品となっている。

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