“ローグライクカードゲーム”『Slay the Spire』の魅力とは? 意外なジャンルのマリアージュが生んだ圧倒的中毒性
9月3日、『Slay the Spire(スレイ ザ スパイア)』のNintendo Switch向けパッケージ版が発売された。
2019年1月のリリース以後、PC、PS4、Switch、Xbox One、iOSと、数多のプラットフォームを渡り歩いてきた同タイトル。ローグライクカードゲームという珍しいジャンルながら各所で不動の評価を獲得し、ついにフィジカルとして発売となった格好だ。
『Slay the Spire』の魅力とは。同タイトルの持つ無二の個性へと迫っていく。
ランダム要素をコントロールしてボス打倒を目指す『Slay the Spire』
『Slay the Spire』は、キャラクターごとに存在するカードプールのなかで、デッキを構築しながら攻略を進めるローグライクゲームだ。
「ローグライク」とは、コンピュータゲーム黎明期のキージャンルのひとつ「ローグ」に由来するジャンル名。一般に、“ゲームオーバーとなったとき、1からやり直しとなる”性質を持つゲームを指す。日本では、ダンジョンRPGと融合した『風来のシレン』シリーズ、『トルネコの大冒険』シリーズが有名で、現代でも数多くのファンを持つ分野となっている。
『Slay the Spire』の舞台となるのは、すごろくのようにデザインされたランダム生成のマップだ。ここでプレイヤーは、数あるマス目を辿りながらゴールを目指していく。それぞれのマスにはバラエティ豊かなイベントが用意されており、その内容に応じてキャラクターやデッキにさまざまな変化が起こる。こうした運要素をプレイでうまくコントロールし、強力なデッキを構築。それを活用してボスを打倒することが、同タイトルのゲーム性である。
なお、冒頭の動画は、PC版ローンチ時に公開されたトレーラーであるため、すべてが英語表記の内容となっている。現在は全プラットフォームで日本語にローカライズ済みだ。
「ローグライク」と「カードゲーム」の融合に眠る『Slay the Spire』の圧倒的中毒性
本来、カードゲームとは、プレイを重ねれば重ねるほど進む「収集」と、そのコレクションを元にした「デッキ構築」が面白さの大切な要素となるジャンルである。しかし、ローグライクの性質を併せ持つ『Slay the Spire』では、敗れるたびに1からのスタートとなるため、一般的なカードゲームと同様の魅力を味わうことができない。同タイトルを“よくあるTCG”だと想像し遊び始めるプレイヤーは、そこに小さくないギャップを感じるはずだ。
しかしながら『Slay the Spire』には、その“案外さ”を補って余りあるほどの中毒性が潜んでいる。この点こそ同タイトルが広く支持される所以である。
『Slay the Spire』では、2つのパートを中心にしてゲームが進行する。マップ上のルートを選択しながらカードの収集を進める「ストラテジーパート」と、構築したデッキを元に戦闘をおこなう「バトルパート」だ。同タイトルにおけるランダム性の大部分は前者に存在しており、プレイヤーは運の要素と寄り添いながら、同パートでバトルの準備を整えていくことになる。その一方で、後者にはほぼランダム性がなく、デッキのクオリティとそれに対する理解度・プレイングで勝利までたどり着くことが可能だ。
つまり、前者と後者のあいだには、コントロールの可否を巡った対照性が存在する。この2つの絶妙なバランスが『Slay the Spire』の誇る中毒性の根源だ。ある程度ゲームに慣れれば、ゲームオーバーの理由が「デッキ構築」と「プレイング」のどちらにあるのか理解できるだろう。その段階までくれば、プレイヤーはトライアル&エラーを繰り返しながら、少しずつ進歩する感覚を味わえるようになる。