“ネットミームとして”次世代ゲーム機の話題独占 『Halo Infinite』が取り戻したい「魅力」を考える

“ネットミームとして”次世代ゲーム機の話題独占 『Halo Infinite』が取り戻したい「魅力」を考える

 7月24日に開催された『Xbox Games Showcase』。このオンラインイベントは、来る次世代ゲーム機の一つ、Xbox Series Xで発売されるタイトルについての新たな情報が発表されるということで、ゲームファンから大きな関心を集めていた。実際にイベント内ではいくつか目玉となるタイトル(自由度の高さで多くのファンを抱えるRPG『Fable』の完全新作など)の発表があったのだが、結局のところ終了後の話題はある一点に集中することになる。『Halo』シリーズ最新作となる『Halo Infinite』の初公開となるゲームプレイ映像。そのグラフィックについてである。

4K 60FPS — Official Xbox Games Showcase — Full Show(ENGLISH)

 本作はXbox Series Xのローンチタイトルとしての発売が予定されていたことから、シリーズファンは勿論のこと、次世代機の性能に関心を寄せる幅広いゲームファンからも注目を集めていた。5億ドルをも超える莫大な開発予算が投じられているという噂もあり、一体どんな美しいグラフィックになるのかという期待が高まっていたところに届けられたのは、一見すると現世代機からそれほど代わり映えのしない風景と、まるでプラスチックのようにフラットなテクスチャのオブジェクト、そしていかにもCGであることが分かるようなモデリングのキャラクターだった。この映像は公開後すぐに大きな賛否の議論を巻き起こし、敵キャラクターのクレイグが映るスクリーンショット(ゲームプレイ動画の4:06付近で確認可能)は、瞬く間にネットミームとなって拡散されていくことになる。

Halo Infinite – Official Campaign Gameplay Premiere

 ミーム自体は面白いし、大いに盛り上がったが、それは別に作品自体の評価を上げるわけではない。結果として、今回のゲームプレイ映像は『Halo Infinite』に対して相当にネガティブな印象を与えることになった。開発元の343 Industriesもブログを通して上記の指摘に反応し、「デモに使用されたビルドは数週間前のもの」、「実際のゲームでのグラフィックやゲームシステムはブラッシュアップされている」と説明していたが、その後、優れたビジュアル開発で知られるSperasoftとの提携を発表し、リリース自体も2021年への延期を決定。理由としては、新型コロナウイルス感染症の流行による開発への影響とチームメンバーの健康維持を挙げているが、フィードバックを踏まえてグラフィックの改善に取り組もうとしていることは明らかである。

 一方で、今回のゲームプレイ映像については、長年のシリーズファンを中心に、Haloらしさを喜ぶ意見が寄せられたり、ゲームプレイ自体は面白そうだという声も多いのもまた事実である。そして、それは開発者が期待していたポジティブなフィードバックでもある。実は『Halo Infinite』はFPSの金字塔として名高い『Halo』シリーズの「精神的リブート(Spiritual Reboot)」と位置づけられており、本作の目的は、元々このシリーズが持っていた魅力を取り戻すことにある。その結果が、今回のゲームプレイ映像となっているのだ。では、何故その必要があったのだろうか? そして、取り戻そうとしている魅力とは何なのだろうか?

(※本稿ではシングルプレイモードのみについて執筆する)

“Bungie時代の名作”と”家庭用ゲーム機の最先端”の狭間で悩んでいた『Halo』

 日本での知名度がそれほど高くないために実感が湧きづらいが、『Halo』は(特に米国の)ビデオゲームの歴史において絶大な影響を及ぼしてきたシリーズである。2002年に発売された初作『Halo: Combat Evolved』(以降、『Halo: CE』)は、当時、家庭用ゲーム機市場に新たに参入したXboxの独占タイトルにも関わらず650万本以上を売り上げ、それまでの「FPSはPC(=マウス&キーボード)で遊ぶもの」という常識を破壊し、家庭用ゲーム機市場にFPSを定着させるという偉業を成し遂げた。今や本シリーズは小説やテレビシリーズ、実写映画にグラフィック・ノベルと、様々なメディアでも展開されており、『Halo』自体がゲームという枠を超えた一つの文化であるといっても過言ではない。

 一方で『Halo』シリーズを巡る現在の状況は、あまり良いものとは言えないのが正直なところである。そのきっかけは2010年、これまで『Halo』シリーズを開発してきたBungieが『Halo: Reach』を最後に離脱し、新たにMicrosoft内で『Halo』専門に設立された343 Industriesが制作を引き継いだことにある。その結果、以降の『Halo』シリーズは常にBungie時代の作品群と比較される運命にあり、一方ではXboxの顔としてハードウェアの性能を象徴する最先端のクオリティを実現しなければならないという責任が求められるようになった。

 だからこそ、343 Industriesが手掛ける作品では、Bungie時代を超えようという野心を感じる大きな変化が相次いだ。『Halo 4』(2012年)では新たな敵勢力(プロメシアン)が登場し、新武器を大幅投入。そのどれもが光学レーザーを主軸に置いた派手でスタイリッシュなデザインとなっており、新たなシリーズを印象付ける内容となっていた。更に『Halo 5: Guardians』(2015年)では”W主人公”と銘打ちつつも、シリーズ全体の主人公であるマスターチーフではなく、新キャラクターのスパルタンロックが実質上の主人公となり、これまで主人公の良き相棒として活躍してきたAIのコルタナがヴィランとなって現れるという大胆なストーリーを展開した。元々ゆったりとしていたゲームスピードも、現代のFPSの潮流に併せて高速化し、グラフィックやフレームレート等の性能面でも常に当時の最高峰に挑み続け、Xboxの顔として、ハードウェアの魅力をアピールする役割を果たし続けている。

Halo 5 Opening Cinematic

 『Halo 4』も『Halo 5: Guardians』も現代のトレンドを意識しながらアップデートされた『Halo』であり、単体で見れば問題なく楽しくプレイすることができるだろう。一方でBungie時代から大きく変化したデザインの方向性やプレイフィールについては「かつての魅力を失っている」という意見が多く、ストーリーについてもシリーズの長期化や他媒体の作品との合流などによって非常に複雑化してしまい、もはや新規プレイヤーは理解できない状態となっていた。だからこそ、343 Industiesはシリーズ最新作となる『Halo Infinite』で「精神的リブート」へと踏み切ることにした。それはつまり、これまでのBungie時代を超えるための取り組みを捨て、当時の良さに立ち返る。そして誰もが理解できる物語を改めて描くということを意味する。

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