“フォートナイトの乱”はどこに向かう? その経過と背景をまとめ、今後を予想してみる
既報の通り、人気バトルロイヤルゲーム『フォートナイト』のApp Storeからの削除とパロディ動画の公開で幕を開けた“フォートナイトの乱”は、ともすれば勢いのあるゲームスタジオがプラットフォーマーに噛みついただけの話、と見られてしまう。しかし、この事件の影響は今やApp Store市場全体に及んでいる。この記事では、“フォートナイトの乱”を正しく理解するために経過と背景をまとめたうえで、今後の展開を予想してみる。
App Store全体を巻き込んだ戦いに
“フォートナイトの乱”勃発以降、この事件の動向が次々と報道され、事件の影響がApp Store全体に広がっていることを改めて証明することとなった。以下では、そうした報道を時系列にまとめる。
・Spotify、FacebookもApple批判を展開(Engadget日本版、HUFFPOST)
・AppleがEpic Games全体の開発者アカウントを停止すると警告(Real Soundテック)
・Epic GamesがAppleの対抗措置に対して、裁判所に差し止めを要請(Real Soundテック)
・アメリカのメディア業界団体が「15%ルール」に関する質問状をAppleに提出(ギズモード・ジャパン)
・Apple、過去にEpic Gamesが特別扱いを求めてきたことを暴露(ITmedia NEWS)
・Epic Games、「#FREEFORTNITEカップ」を開催
以上の報道における「15%ルール」とは、AmazonやNetflixといった一部の企業に対してApp Storeのプラットフォーム使用料が通常の30%から15%に減額されていることを意味する。アメリカのメディア業界団体は、減額が適用される条件を開示するように求めたのだ。
また、“フォートナイトの乱”とは直接関係ないのだが、オープンソースのブログ編集アプリWordPressのiOS版のアップデートに関して、Appleが課金オプションを追加するように開発者に要求したことが報じられ、物議を醸した。その後、Appleはこの要求を撤回した。しかし、iOS版WordPressをめぐる一連のやりとりは、AppleのApp Store運営手腕に対して悪い印象を与えるものとなってしまったようだ。
よくある疑問とその回答
以下では、“フォートナイトの乱”に関するよくある疑問について、その回答をまとめていく。
Q.“フォートナイトの乱”は、結局のところ、Epic Gamesが自社の利益を最大化するために騒いでいる「わがまま」ではないか?
A.フォートナイトの乱を起こした理由については、Epic GamesのCEOであるTim Sweeney氏がツイートで説明している(以下のツイート参照)。そのツイートにおいて、今回の争いはスマホアプリ市場における自由な取引を求める「自由のための戦い」である、と同氏は強調している。そして、この戦いはEpic Gamesだけの問題ではなく、アプリ開発者とアプリユーザの問題である、とも述べている。
At the most basic level, we’re fighting for the freedom of people who bought smartphones to install apps from sources of their choosing, the freedom for creators of apps to distribute them as they choose, and the freedom of both groups to do business directly.
— Tim Sweeney (@TimSweeneyEpic) August 14, 2020
Q.Appleが定めるプラットフォーム使用料は正当なものであり、何ら問題はないのではないか?
A.App Storeを運営するにはiOSのアップデート等の業務が不可欠な以上、プラットフォーム使用料を課すこと自体には何ら問題はない。今回問題となっているのは、使用料の決定と運用が独占的かつ不公正ではないか、という点である。前述の「15%ルール」は、使用料の不公正な運用と非難される余地があるだろう。
Q.訴状を提出するだけでよかったのに、なぜEpic Gamesは“フォートナイトの乱”をしかけたのか?
A.仮にAppleの市場独占に関する訴状だけを提出していたら、メディアとユーザはこの問題に注目していただろうか。パロディ動画まで制作して言わば確信犯的に問題を起こしたEpic Gamesは、無味乾燥な法的な問題を「抵抗と解放の物語」としてアピールすることができた。そして、巨大プラットフォーマーに異議申し立てするヒーロー、という印象を同社に抱かせることに成功したのだ。