『フォートナイト』App Store&Google Play削除を受け、Epic Gamesは徹底抗戦の構え デジタルエコシスエムの在り方は再考の時期へ?
直近では米津玄師のバーチャルライブを開催するなど、今までゲームに接点のなかったユーザの注目を集めることに成功した『フォートナイト』が、かつてない戦いに身を投じることになった。戦う相手は、文字通り世界を支配しているあの二大企業だ。
Appleこそがビッグブラザー
国内ゲームメディア『ファミ通.com』は14日、Epic Gamesが開発・運営するバトルロイヤルゲーム『フォートナイト』が、App StoreとGoogle Playから削除されたことを報じた。削除される原因となったのは、Epic Gamesが13日に同ゲームに実装した新たな決済システム「フォートナイト メガプライスダウン」である。このシステムは、ゲーム内通貨V-Bucksおよび現金を使ったゲーム内での購入に関して、現行より最大20%割引(しかも恒久的に)されるというもの。こうした割引が可能なのは、新たな決済システムがApp StoreとGoogle Playに対するプラットフォーム使用料が上乗せされないEpic Games独自のものだからだ。この決済システムの実装によって、Epic GamesはAppleとGoogleが専権事項として決定しているプラットフォーム使用料に対して異議を唱えたことになる。
プラットフォーム使用料を骨抜きにする今回の措置に対して、AppleとGoogleはそれぞれアプリストア利用規約違反として、フォートナイトの削除に踏み切った。削除の直後、フォートナイト公式ツイッターアカウントは、Appleの削除措置に抗議するツイートを投稿した(下のツイート参照)。
Epic GamesはApp Storeの独占に異議を唱えました。報復として、Appleは10億のデバイスでFortniteをブロックしています。https://t.co/VwLAHlzLap へアクセスし、2020年を「1984」にしないための闘いに参加してください。 pic.twitter.com/LSKyXiXQVA
— フォートナイト (@FortniteJP) August 13, 2020
引用したツイートには「2020年を「1984」にしないために」という文言とともに、動画が添付されている。この動画はYouTubeでも公開されており、「Nineteen Eighty-Four(1984)」をもじった「Nineteen Eighty-Fortnite」というタイトルになっている。この「1984」というのは、ジョージ・オーウェルのディストピア小説『1984』を指している。架空の近未来社会を舞台とした『1984』には、ビッグブラザーと呼ばれる独裁者が登場する。Epic Games制作の動画は、AppleをApp Storeの独裁者と揶揄しているのだ。
ちなみに、現実世界の1984年、Appleは史上初のMacであるMacintosh 128Kを発売し、その年のスーパーボウルのハーフタイムにCMを放映した(下の動画参照)。このCM動画では、当時のコンピュータ業界の巨人であったIBMがビッグブラザーに見たてられていた。今回Epic Gamesが制作した動画は、このApple制作の動画のパロディであるのは明らかだ。
直接支払いシステムが認められているアプリもある
『フォートナイト』削除という報復措置を受けて、Epic Gamesは「#FREEFORTNITE」と題されたブログ記事を公開した。その記事では、『フォートナイト』のプレイヤーであれば当然抱く疑問に対して回答をまとめている。
iOSデバイスのみで『フォートナイト』をプレイしているプレイヤーは、現状ではもはやアップデートを行う手段がない。そして、アップデートできるようにするために、Appleに抗議することをすすめている。具体的には、各種SNSで#FreeFortniteのハッシュタグをつけて@App Storeに抗議メッセージを送信するのだ。
iOSプレイヤーのアップデート手段が奪われた状況で、8月27日に予定されているチャプター2シーズン4が開始となった場合、iOSプレイヤーは引き続き『フォートナイト』をプレイできるが、新規アイテムとバトルパスを利用できなくなる。
また、ブログ記事にはEpic Gamesが実際にアメリカ司法当局に提出した訴状へのリンクが設定されている。
さらに、アプリストアからの削除の原因となったメガプライスダウンのFAQページには、今回の問題に関するEpic Gamesの主張がまとめられている。
そうした主張のひとつとして、直接支払いシステムは多数のアプリで導入されており、フォートナイトが同様のシステムを実装したことに対して報復するのは、アプリストア規約の恣意的な運用にあたる、とEpic Gamesは指摘している。そして、直接支払いシステムが認められているアプリとして、AmazonやBest Buyの名前を挙げている。
Netflixのように、アプリを使わずにモバイルブラウザを使って契約や決済を行う方法も可能である。しかし、こうした迂回的な方法はユーザにとって使いにくいものである、とEpic Gamesは考えている。