ソニー、なぜ約270億円を『フォートナイト』のEpic Gamesに投資? 高評価の理由は“Unreal Engine”にあり
『フォートナイト』の成功により業績が好調なEpic Gamesに関して、さらに追い風となる知らせが届いた。次世代ゲーム機のリリースをひかえたあの世界的日本企業が、同社を高く評価していることがわかったのだ。このように同社が躍進した推進力は、フォートナイトのほかにもある。
連携はゲーム以外の分野でも
ビジネス系メディア『Venture Beat』は9日、ソニーがEpic Gamesに対して2億5000万ドル(約270億円)の投資を行うことを報じた。この投資により、両社はテクノロジー、エンターテインメント、そしてソーシャルオンラインサービスの最先端を進むという共通の目標に向かってさらに連携を強化することになる。
今回の投資に関して、ソニーの会長兼社長でCEOでもある吉田憲一郎氏は、Epic Gamesのテクノロジーはゲーム開発の最前線に位置づけられ、その成果はフォートナイトによって示されている、と同社のプレスリリースで語っている。対してEpic Gamesのティム・スウィーニーCEOは、ソニーとEpic Gamesはクリエイティビティとテクノロジーの交差点でビジネスを展開しており、ゲーム、映画、そして音楽をけん引するリアルタイムな3Dソーシャル体験の推進というビジョンを共有している、と述べている。
Epic Gamesが高く評価される要因には、フォートナイトの成功はもちろんのこと、同ゲームの開発にも使われているゲームエンジンUnreal Engineの存在が指摘できる。5月には、同エンジンの最新版Unreal Engine 5のデモ動画が発表された(下の動画参照)。公開されたデモ動画で示された実写映画と遜色のないフォトリアルな描画能力に、ゲーム業界と映画業界の関係者は驚愕したのだった。同エンジンはPS5とXbox Series Xに対応したゲーム開発に活用されると見られるので、今後多くの需要が見込まれている。
ドラマ『マンダロリアン』の背景を描画
引用したUnreal Engine 5のデモ動画のクオリティを見ればわかるように、同エンジンの描画能力はゲーム開発だけではなく映画制作にも活用できる。同エンジンの公式サイトは2月、映画制作における活用事例としてスターウォーズシリーズのドラマ『マンダロリアン』の制作現場を紹介した。
従来のSF映画では、撮影シーンの背景にグリーンバック(緑色の幕)を設置して、役者の演技のみを撮影後に背景を合成するという手法がとられていた。この方法では作業工程が膨大になるため制作に時間がかかるうえに、撮影中には最終的な映像がわからないという問題を抱えていた。
マンダロリアンの撮影では、グリーンバックの代わりに役者を囲むように湾曲したディスプレイをおいて、そのディスプレイにリアルタイムに背景を描画するようにした。この背景の描画に使われたのが、Unreal Engineである(下の動画参照)。こうした撮影手法を採用した結果、制作時間の大幅な削減と同時に、役者と映画監督が最終的な映像を確認しながら撮影することができるようになったのだ。