『水溜りボンドのANN0』第20回おさらい Official髭男dism・藤原聡が選ぶ二人の“オススメ動画”は?
「藤原聡の音楽講座」コーナー、爆誕!
前述した通り、音楽にまったくと言っていいほど触れた経験がなく、一般によく知られる人気曲もほぼほぼ知らない奇跡の男・トミーに、あのヒゲダン藤原がオススメの音楽をレクチャーするという、もったいないほどの企画だ。今回は3曲をピックアップ。音楽の楽しさや奥深さが伝わる素晴らしい内容だったので、ぜひ常連リスナーではない、音楽好きの方にも聴いていただきたい。
最初に藤原がピックアップしたのは、2020年1月に若干22才でメジャーデビューして以来、その実力で話題をさらっているミュージシャン・藤井風の初音源である「何なんw」。「彼が作る歌心あるメロディーやピアノもすごいが、岡山出身である彼の書く、方言訛りの歌詞にも注目してほしい」とし、「一人称が“ワシ”であったり“~言うたが”“何じゃったん”などの方言が、彼の奏でるブラックミュージックっぽい音楽と絶妙に混ざっている。その感じが唯一無二であり、藤井風にしかできない音楽」と評した。そして「この曲が入っているアルバム『HELP EVER HURT NEVER』が本当に名盤なので、最初から最後まで丸ごと聴いてほしい」と太鼓判を押した。
そしてここで、トミーから「ブラックミュージックってなんですか?」という、音楽を知らないからこそできる素直な質問が。これに対して藤原は、「ブラックミュージックというのは、いわゆる黒人が演奏していた音楽がルーツになっている」という前提から、「60年代に設立された米のモータウンと呼ばれるレベールからのアーティストが有名」と、スティービー・ワンダーや、子ども時代のマイケル・ジャクソンが所属していたジャクソン5などの具体名も挙げて、しっかりと説明。「現代では、ヒゲダンはもちろん星野源さんなんかも影響を受けている」とレクチャーした。
それだけでなく、「へーーーーー」という反応しかまだできないトミーに、「音楽はどこまで知識を知っているかがえらいじゃない、聴いた感覚が全てです!」と“こんな担任に青春時代に会っていたら、間違いなく人生が変わっていただろう”と思わせるようなグレートティーチャーぶりを発揮する藤原だった。
続いて選ばれたのは、兄弟での活動を終え、バンドとしてメンバーチェンジを繰り返しながら今も進化するKIRINJI(キリンジ)による、2001年にリリースされた楽曲「Drifter」。「メロディーや歌詞も素晴らしいが、この楽曲を聴くと自分が“空を飛んでいる”かのような気分になる」とし、「音楽って、聴いておると“なんてこの世界って素晴らしいんだろう”と、どんなに嫌なことがあっても思う瞬間があるんですよ。(『Drifter』は)その瞬間をくれた楽曲」と、自身の体験も交えて解説。「心の葛藤なんかも綴られた底抜けに明るい楽曲では決してないが、この曲を聴いていると、どんな分厚い雲からでも星空が出てきそうな気分になる」「歌詞にある<ムーン・リヴァーを渡るようなステップで>って文字だけで見ると、なんのことなんだろう?って気がするんですけど、それを何度も聴いていると、“ああ! 分かる!”って気になる。視覚でも嗅覚でもなく第6感のようなものでそれを知ってるような気になってくる」「言葉とメロディーのノスタルジックも相まって、“景色を見せる”というのが邦楽の良いところ」だと、その魅力を語った。
そして最後は、ボーカルの志村正彦を2009年に亡くしながらも、現在もファンを魅了し続けているフジファブリックによる2004年リリースの楽曲「陽炎」。当時、春・夏・秋・冬をテーマに楽曲リリースしている時期があったフジファブリックの夏の楽曲にあたるものだ。少年が遊びに行こうと思うと雨が降っており、肩を落として帰るが、次に窓からそっと手を出すと、いつの間にか雨が上がっていることに気づき、慌てて家を飛び出して行くーーそんな情景が描かれたこの楽曲を聴くと「ガキの頃に戻る」とし、「この歌詞に含まれているメッセージは、志村という一人の男の体験を通して、全人類の“少年少女時代”をカムバックさせるような楽曲であり、曲の失踪感の中にも含まれる湿り気のようなものもまたこの季節にはぴったりだ」と解説。それに対して「今日この曲に出会ったのも僕の中では(人生の)ストーリーになっている」という素晴らしい感想を述べるトミーに、藤原もまた「それは音楽の最高の出会い方」「ある日、自分の人生を変えたりするような音楽との出会いって、本当にすごく突然で、ご飯を食べてる時に不意に流れいてた音楽だとか、何にも代えのきかない瞬間だと思う。それが音楽の素晴らしさだと思ってる」という、これまた音楽の本質に迫る回答を、音楽を知らないトミーを通して、全リスナーに語りかけた。
新旧の楽曲を織り交ぜた本気のセレクトで、音楽的ポイントを押さえた楽曲説明から、理論だけではない感覚的な“音楽のすすめ”まで、多くのことを伝えた藤原。普段、彼自身が音楽に対してどのように向き合っているのかも分かる、貴重な時間となった。
そして、機械音痴で奮闘しながらも、放送中にすぐさま楽曲をダウンロードするトミーに、「昔、大学教授がゴリラに数学を教える映像を見たことがありますが、今日それを思い出しました!」という安定のいじりから、“感動のフィナーレ”的な素晴らしい内容に「え、もしかしてこの番組今夜で終わるんですか?」という声まで、リスナーから幅広い感想が寄せられていた。
え、藤原さんって、聖人なの?
貴重な音楽講座に続いて、藤原は、カンタが“天界の者”のような妙なハイテンションとハイトーンボイスでリスナーから届いたお便りを次々に“浄化”していく謎のコーナー『さよならチェーンソーの会』(現在は期間限定でハーゲンダッツが“タッグパートナー”の『ありがとうハーゲンダッツの会』に名称を変更中)にまで出演。カンタに負けないくらいの見たこともないテンションと、さすがのハイトーンボイスで藤原自身もリスナーからのお便りを読み切っていた(美声の無駄遣いすぎる!)。
このように終始、神対応を見せる藤原に最後、トミーは必死に自分との共通項を見出そうと「今日この日までに藤原さんの経歴を見させてもらって、絶対に『半沢直樹』にハマるタイプの人だなと思ったんですけど、どうですか?」という推理をぶつけたのだが、「毎週めちゃくちゃ楽しみに見てます!」と的中しており、ここにきての謎の意気投合。たたみかけるように、島根出身の藤原に名産品である「のどぐろは食べます?」という質問をぶっ込み、藤原から「食べます! 食べます!」という優しい反応をもらって、共通項があったことに安心した様子のトミーだった。
リスナーからのメールにもあったように、まるで最終回のような盛り上がり方を見せた1時間半。コーナーを終えると早々と去ってしまうゲストも多いなかで、エンディングトークまで残ってくれた藤原聡の人柄の良さと、音楽への熱意に胸を打たれた水溜りボンドファンの皆さんは、8月5日リリースされたOfficial髭男dism4曲入りEP『HELLO EP』をぜひチェックしよう!
■こたにな々
神戸出身・東京在住のフリーライター。音楽やアート、YouTuberのライブレポートやインタビューを執筆。詩人としても活動中。