キュートなミニチュアに秘められた、語られない惨劇ーーばらばらの空間を結びあわせるパズルADV『The Almost Gone』

キュートなミニチュアに秘められた、語られない惨劇ーーばらばらの空間を結びあわせるパズルADV『The Almost Gone』

 だが、空間として完成されるはずの建築は、ここではいずれも点と点で分離した断裂状態としてしか存在できない。あたかも、設計者そのものの意識がはじめから破綻していたかのようなちぐはぐさだ。主人公は分裂した空間をわたり歩き、なんとか点と点をつなげようとする。ときに部屋をまたいでプラグをつなぎ、ときに離れた部屋の配管を辿り、「線」を結んで空間を縫い合わせようと格闘するのだ。彼女がそうするのは、かつて星をつないで星座を眺めた思い出こそ、彼女が父と育んだ絆を担保する最大の掛け金だからかもしれない。

 引き裂かれた心で設計された、ばらばらの世界に閉じ込められた主人公。点と点をつなぎ合わせる本作のパズルは、断片となってしまった空間を結ぶ彼女の祈りにも近い営みといえるだろう。たとえその旅路の結末がどんな事実に至ったとしても、そこには確かに家族の姿を見つめようとした彼女の意志があったはずだ。

 『The Almost Gone』はPC/Mac向けにSteamにて配信されているほか、iOS/Android向けアプリも配信中。日本語にも対応している。

■Yuki Kurosawa
フリーライター。ゲーム系の記事を中心に執筆している。海外のインディー作品をよく好む。何度も死んで覚えるゲームが得意(一手先が読めないため)。
Twitter:@Yki_Krosawa
サイト : https://yuki-writer.com

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