Travis Scottの「Astronomical」は、『フォートナイト』から生まれた現代アートだ

Travis Scott×フォートナイトが生み出した“アート”

 4月24日から26日にかけて、人気バトロワゲーム『フォートナイト』において、アメリカのラッパーTravis Scottをフィーチャーした音楽イベント「Astronomical」が5回公演された。同イベントは記録ずくめの大成功だっただけではなく、音楽体験として独創的なものでもあった。

ビリー・アイリッシュを超えた

 「Astronomical」は音楽イベントではあるものの、『フォートナイト』のゲームマップ内で体験することが前提とされていた。それゆえ、以下に引用するTravis Scottの公式Youtubeチャンネルで公開された動画を視聴したとしても、ゲーム内で体験できたものと等しくない。同イベントは文字通り筆舌に尽くしがたく、その体験の豊かさは動画から溢れてしまう。

YouTube「Travis Scott and Fortnite Present: Astronomical (Full Event Video)」

 前代未聞とも言えるAstronomicalは、数々の記録を樹立した。そうした記録を以下に列挙する。

・日本時間の4月24日8:00から開催された第1回公演は、同時接続数者数で1230万を超えた(以下のツイート参照)。この記録は昨年開催されたDJのMarshmelloをフィーチャーしたゲーム内イベントで記録した1070万を超えた。

・同イベント開催告知直後の4月20日と21日には、SpotifyにおけるScottのストリームが25%上昇し、ヒット曲「STARGAZING」にいたっては50%以上、上昇した(US版Rolling Stone)。

・同イベントで披露された新曲「THE SCOTTS」は発表初日にSpotifyで745万ストリームを達成し、Spotifyグローバルチャートで1位となった(音楽メディア『chart data』のツイートより)。

・Spotifyにおける「THE SCOTTS」の初日収益は、2020年において暫定1位であったビリー・アイリッシュの新曲「No Time to Die」(映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の主題歌)を超えた(音楽メディア『chart data』のツイートより)。

バーチャル空間でしか存在しえない体験

 Astronomicalに関しては、多数の海外メディアがレビュー記事を公開している。それらの記事は、同イベントが様々な記録を樹立したことに言及すると同時に、内容が独創的であったことを絶賛している。つまり、興行的に成功しただけではなく、挑戦的な内容の音楽イベントでもあったことを評価しているのだ。以下に、そうしたレビュー記事の一部を抜粋する。

・Astronomicalはイベント、アートインスタレーション、ミュージックビデオ、ビデオゲームの不思議なミックスだ。まったく新しいタイプのメディア体験を告げ知らせており、時が経つにつれて変化し続けるかも知れない...つまり、(2000年代に流行したバーチャル空間である)Second Lifeのコンサートが10年前に提供できるものと、『フォートナイト』のそれが実際に実現したものとの間には、大きな違いがある(ゲームメディア『Polygon』)。

・Astronomicalの完全な体験を得るためには、このイベントを実際にプレイしなければならない...それはサイデケリックなグッドトリップの完璧なシミュレーションだ(ファッションブランド「HIGHSNOBIETY」のレビュー記事)。

・『フォートナイト』のゲームマップ全体がAstronomicalの舞台であった...それはバーチャル空間のなかでしか存在しえない種類の体験なのだ(テック系メディア『The Verge』)。

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