日米のApple Storeが無期限閉鎖 Apple社員の新型コロナウイルス感染も5名に

日米Apple Store無期限閉鎖

 中国を除く全世界のApple Storeは、現在休業している。休業の理由は、もちろん新型コロナウイルスの流行を受けてのことだ。営業再開時期については、ますます不透明となっており、災禍に見舞われたApple社員も確認されている。

「追ってお知らせするまで」休業

 3月18日時点でApple公式サイトにアクセスすると、ウェブページの上部にApple Store休業に関するメッセージが表示されている。その文言には「お近くのApple Storeは、追ってお知らせするまで休業いたします」とあり、営業再開時期を明記していない。営業が再開されるのは、おそらく新型コロナウイルスの感染流行が収束する兆しが見えてきてからになるだろう。

 既報の通り、Appleのティム・クックCEOは13日、中国を除く全世界のApple Storeを閉鎖することを発表した。この時点では休業期間を3月27日まで、と明記していた。今回営業再開時期の明記を取りやめたことから、同社が新型コロナウイルスの影響を重く見ていることがうかがえる。

 Apple Storeの無期限閉鎖に関しては、アメリカ大手メディアCNBCがアメリカでも同様の措置がとられたことを17日に報じている。16日には、トランプ大統領が10人以上が集まる行為を避けるようにアメリカ国民に語っていた。

アメリカとアイルランドで感染確認

 Appleが被っている新型コロナウイルスによる災禍は、Apple Storeの休業だけに留まらない。Apple専門ニュースメディア『appleinsider』は16日、アメリカでApple社員の1人に新型コロナウイルス感染の陽性反応が出たことを報じた。感染が確認された社員が働いていたのはカリフォルニア州カルバーシティにあるオフィスで、現在は隔離されている。カルバーシティのオフィスはハリウッドに近いところにあることから、感染した社員はApple TV+のオリジナルコンテンツの制作に関わっていた可能性がある。

 appleinsiderの記事は、以上の感染以外にもApple社員の感染が発生していることを伝えている。13日には、カリフォルニア州サンタモニカで務めている1人のApple社員の感染が確認された。同じく13日にアイルランドにあるAppleの拠点に勤める2名の社員から、感染の陽性反応が出た。この拠点においては、10日に1名の社員の感染が確認されているので、合計して3名の社員が感染したことになる。合計すると、全世界で5名のApple社員が感染したことになる。

 Apple社員の感染が確認されたアメリカとアイルランドの感染状況は、世界最高峰の医学部を擁するアメリカのジョンズ・ホプキンス大学が日々更新している感染拡大マップを見ると確認できる。18日時点ではアメリカにおける感染者数は約6,400人でフランスの約7,700人に次いで多い。アイルランドの感染者数は約220人で、アイスランドやエストニアと同程度である。

長期的にはApple神話は揺るがず

 以上のように新型コロナウイルスの災禍に見舞われても、市場関係者のAppleに対する信頼は揺るがないようだ。Apple専門ニュースメディア『9to5Mac』が17日に公開した記事では、Appleの株価は年末には反転するという市場関係者の予想が報じられた。その記事によれば、大手投資グループのゴールドマン・サックスのアナリストRod Hall氏は、Apple Storeの閉鎖を含む新型コロナウイルスの影響により、2020年第1四半期のAppleの収益予測を4.5%、さらに第2四半期の収益予測も5.5%下方修正した。

 しかし、第4四半期については、5.5%増と予測している。楽観的とも思われる予測に関して、世界におけるApple製品の需要に対する新型コロナウイルスの影響が中国で見られた程度で収束した場合、むしろその正しさが証明されるだろう、と同氏は説明している。

 経済メディア『INVESTOR’S BUSINESS DAILY』も、16日に市場関係者のAppleに対する評価を報じている。多数の市場関係者は、新型コロナウイルスの影響は今後3~6ヶ月続くものも、2020年末には正常化すると見ている。そして、早くも2020年末から2021年初めの業績に目を向け始めているのだ。投資銀行JPモデルガンのアナリストSamik Chatterjee氏も、こうした見方をしている1人である。同氏は、2021年におけるAppleの業績は非常に明るいものと予想している。楽観するのは、5Gに対応すると見られる次期iPhoneが記録的に売れると考えているからだ。次期iPhoneに関しては、既報のように「5G特需」が発生すると推測されている。

 市場関係者は「新型コロナ収束後」のAppleに目を向け始めているものも、現実には新型コロナウイルス流行収束の兆しはあまり見えない。場合によっては、Appleが新型コロナ感染に対する「次なる一手」を打つ可能性もあるので、引き続き注意を向けておくべきだろう。

トップ画像出典:Apple公式サイトより画像を抜粋

■吉本幸記
テクノロジー系記事を執筆するフリーライター。VR/AR、AI関連の記事の執筆経験があるほか、テック系企業の動向を考察する記事も執筆している。Twitter:@kohkiyoshi

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