プロレスラー&格闘家はYouTuber向き? 蝶野正洋のチャンネル開設、朝倉兄弟の成功から考える

 有名人・著名人のYouTuberデビューが日曜茶飯事になっている昨今において、プロ格闘家YouTuberも存在感を示しつつある。その筆頭にあるのが、朝倉未来・海兄弟だ。

 はじめにYouTube上で頭角を現したのは兄の未来。未来がプロ格闘家としてだけでなく、YouTuberとしても注目されるきっかけになったのが、昨年6月に公開された動画「街の喧嘩自慢にプロ格闘家がスパーリングを申し込んだらやるのかやらないのか」だ。

街の喧嘩自慢にプロ格闘家がスパーリングを申し込んだらやるのかやらないのか【前編】

 街をフラッと歩き、その辺にたむろしているヤンチャそうな若者たちに「この中で一番喧嘩強い人誰?」と話しかけていく未来。その中から腕に覚えのありそうな者をジムに呼び出し、1人残らず叩きのめしていく様はさすがの一言だ。それだけでなく、スパーリングの後には拳を交えた若者たちを居酒屋に連れていき、「将来の夢とかあるの?」と相談に乗るという、頼れるアニキ的な親しみやすさも動画の中で垣間見せている。

 そんな未来に続けとばかりに、弟・海も、ここ最近になって精力的に動画をアップしている。とりわけ人気なのが「格闘家がオタクの格好をして歌舞伎町でポイ捨て注意してみた」という動画だ。

格闘家がオタクの格好をして歌舞伎町でポイ捨て注意してみた

 これは、秋葉系男子に扮した海が、たばこのポイ捨てをするマナー違反者を注意するというもの。当然、中には「もううっせぇからそっち行けよ!」と食って掛かるゴロツキもいるのだが、そこはプロ格闘家。海がチェックのシャツを脱ぎ捨て、鍛え上げた肉体を見せつけながらシャドーボクシングを披露して見せると、たちまち全員しおらしいしくなる。こうした修羅場の後に、遠くでムービーを回しているカメラマンとのことへ歩み寄って、「あぶね。マジで、殴られるかと思った! 本当にヒヤヒヤした(笑)」とへらへらしながら報告するという等身大の若者的落差もまた良い。

 配信者の人物像を深いところまで掘り下げられるのが、YouTubeのメリット。テレビ的な枠組み、とりわけ、バラエティ番組的な仕組みの中では、ワンポイントリリーフのような扱いになりがちなプロレスラーや格闘家も、YouTubeでは好きなだけ自分語りができ、企画次第で自然体な素顔をアピールすることもできる。最近、長州力のかわいらしいツイッターが話題になったことからも明らかなように、コワモテで屈強な男たちのポジティブな意味での意外な一面には、人を惹きつける力があるものだ。

 それに、YouTubeでは格闘家の商売道具である“強さ”を、最大限見せつけるようなセルフプロデュース的企画を発信しやすい。「強くて良い人」を嫌いな人などいない。その意味で、朝倉未来のスパーリング動画と、海のポイ捨て動画は、格闘家としての“強さ”と、テレビやリングの上ではなかなか見られない「本当は良い人感」をうまい具合に両立させた、格闘家YouTuberにおける成功のプロトタイプ的動画ともいえる。

 そして、プロレスリングの世界に止まらない影響力を持ち、普段の活躍とギャップのある真面目な一面とともに、それをエンターテイメントとして広く届けようという戦略すら明かしている蝶野正洋の挑戦は、あとに続くと思われるプロレスラー、格闘家YouTuberにとっての試金石になるだろう。世代の差はあれ、朝倉兄弟のような大きなバズを起こすことに期待したいところだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる