ぶんけいインタビュー
“経営者“ぶんけいに聞く、新社名&新たな採用施策を打ち出す理由「常に人の心をくすぐり続けたい」
YouTubeでの活動で人気を広げてきたクリエイター・ぶんけいが2017年に設立し、映像作品を中心としたさまざまなクリエイティブを手がけてきた「トウメイモード」が6月21日、「ハクシ」と社名を変更し、新たなステージに向けて動き始めた。リアルサウンド テックでは、そんなぶんけいのいまと未来に迫るべく、インタビューを企画。ファンへの熱い思い、そして、活動休止後の活動や経営者としての今後の目標まで、じっくり聞いた。
「絶対に成功しなきゃな、という気持ちになりました」
ーーYouTubeでの活動を6月いっぱいで休止されましたが、例えば、新たな区切りとして、これが実現できたら活動休止の目的が果たせる、というゴールのようなものはありますか?
ぶんけい:ぼくとしては、こういう会社にしたい、という理想と、個人の作家としてこういう事ができるようになりたい、というふたつのゴールはある程度、決めています。会社としては、大枠として「人の心をくすぐるクリエイターたちが集まるアトリエ」にしたい。さらに面白いクリエイターに集まってもらうためにも、いい仕事をして、きちんと結果を出さなければいけません。また個人としては、いろいろな軸を持ったからこそ、生み出せるものをつくれる作家になりたいと考えています。
ーーなるほど。一つのことを突き詰めるというより、異なるジャンルを高いレベルで横断して、その掛け合わせでいいものをつくると。
ぶんけい:そうですね。マルチな方が活躍している時代の影響もあるかもしれませんが、ぼく個人としては、そういう戦い方をしたいと考えています。ぼくは菅田将暉さんの歌手としての姿がとても好きで、そこに俳優をしているからこその表現力を感じるんです。これも、マルチな活動をしているからこそ生まれる魅力だと考えていて。
ーー確かに、歌を追求して、ボイストレーニングを重ねた結果、身につく魅力ではないのかもしれません。
ぶんけい:そうなんです。それは歌の先生からは教わることができない技術だと思うので。
ーーそうすると今後は、YouTuberとしての活動で培ったものを、まったく別のクリエーションに活かしていく、ということがありそうですね。
ぶんけい:本当に多くのことに活かせると信じています。会社の「人の心をくすぐる」というコンセプトで言うと、YouTubeはまさに「人の心をくすぐり続ける」仕事だと思うんです。しかも、今日アップしたものが、明日には結果が出る/反響がもらえる、というスピード感で。これが映画だったら、1年、2年と時間をかけなければ結果が出ないので、経験値を得るのは難しいのではと。
ーーYouTubeでの活動休止を発表したとき、社員のみなさんはどんな反応でしたか?
ぶんけい:驚きつつ、最初に言ってもらった言葉が「おめでとう!」だったんですよ。それは「しんどそうな活動から解放されるね」という意味ではなくて、自分のなかで悩んでいたことが整理できて、答えを出せたことに対しての言葉で。「おつかれさま」でも、「残念だね」でもなく、「おめでとう」という言葉が出てくるのは会社の人だけだろうし、とてもうれしかったです。
ーー一方で、YouTuberの仲間からの反応はどうだったでしょうか。
ぶんけい:やっぱり多かったのは「もっと一緒にやりたかった」ということでしたが、「悔しい」と言ってくれる人もいれば、背中を押してくれる人もいて、本当にさまざまでした。こんなに分かれるのか!というのが面白かったですし(笑)、どれも本音だと思うので、本当にうれしかったですね。視聴者のみなさんもそうですけど、これだけ真剣に向き合ってくれた仲間のクリエイターのみんなのためにも、絶対に成功しなきゃな、という気持ちになりました。自分のことだからゆっくりでもいいか、という気持ちもあったんですけどね(笑)。
ーーそして、忘れてはいけないファンの反応ですが、こちらも温かいものでしたね。
ぶんけい:そうですね。正直、どう受け止められるのかと心配していたところもあったのですが、公開して一時間くらい経った時点で温かい言葉がいっぱいだったので、本当によかったです。視聴者さんも、仲のいいクリエイターと同じような距離で見てくれてたんだな、と実感しました。
距離が遠いと「なんでやめちゃうの?」になると思いますし、距離が近いからこそ、「頑張ってこいよ!」と言ってもらえたというか。「夢をあきらめていたけど、自分も頑張ってみようかな」と言ってくれる人もいて、それもうれしかったです。
ーー活動休止後は、もう翌日からガッツリ会社に、という感じだったのでしょうか?
ぶんけい:そのとおりで、次の日からまったく違う生活でしたね。もちろん、最後の動画を上げたばかりなので、職業病として視聴者さんの反応は気になりましたけど(笑)、動いている手と頭は、仕事に向かっていました。
ーー飛躍を期して、まずは土台を固めていたということですね。さて、社名も新たにスタートを切った「ハクシ」ですが、今後の展開について伺いたいと思います。まずはあらためて、前身となる「トウメイモード」を設立された経緯から聞かせてください。
ぶんけい:もともと映画が撮りたくて、関西の大学で映像を学んでいました。4年生になると、みんな就職活動を始めますよね。そこで「どこに行けば映画が撮れるのだろう?」と調べていったのですが、どの会社に行っても、すぐには映画を撮れそうにない。基本的にポジティブな考え方をする性格なのですが、このときは初めて、将来が見えなくなるような感覚になってしまって、2~3ヶ月、人に会えなくなるほど悩みました。
そこで、自分は大学のように自由な場で生きるのは得意だけれど、制約/ルールのなかで生きるのは苦手なんだ、ということがわかったんです。社会人になるというのは、学生時代より厳しいルールのなかに入っていく、というタイミングでもあって。そんななかで、大学で一緒に映像作品の制作をしていた、オカダトウイチロウに相談したんですよね。そうしたら、いきなり「会社つくったらええやん!」と言われて。
ーーまさに人生の転機になる一言ですね。
ぶんけい:オカダはクリエイターとしてはきちんとしているのですが、変わった子なので、最初は「またおかしなこと言ってるわ」という感じだったんです(笑)。でも、一人になって冷静に考えると、「自分で会社をつくれば縛られるルールはないし、それもアリなのかもしれないな」と。その数日後には、自分からオカダに「もうちょっと詳しく考えてみない?」と話しました。そこからトントン拍子に話が進んでいって、「自分で言い出したんだから、あなたも会社に来なさい!」ということで、ふたりで準備を始めて。それが2015年の話ですね。