『ポケモン』新作は睡眠をエンタメ化し、生活の全てに干渉する? 『ポケモンSleeP』の可能性を探る
5月29日、ポケモン事業戦略発表会が東京都内で行われたが、その目玉となったのが新たなゲーム『ポケモンSleeP』だ。株式会社ポケモンの石原恒和社長は「プレイヤーの寝た時間、起きた時間など睡眠をエンターテイメント化するゲーム」と説明する。
同ゲームは、ポケモンアプリ『はねろ!コイキング』の製作にも携わったSELECT BUTTON社と共同で開発しており、2020年リリース予定だ。
『ポケモンSleeP』に使用される新たなデバイス『ポケモンGO PLUS+』の開発は、任天堂が担当。日中は、『ポケモンGO PLUS+』として持ち歩き、夜は、内蔵された加速度センサーで眠っている時間を計測し、Bluetooth通信でスマートフォンに転送するという。
『ポケモンSleeP』は『ポケモンGO』を補完する?
1996年、ゲームボーイソフト『ポケットモンスター 赤・緑』として生まれたポケモンシリーズは、様々な派生プロジェクトが企画されてきたが、その節目ともいえる20周年にリリースされた『ポケモンGO』が、爆発的な人気を博した。その仕掛け役は、位置情報をゲームに採りこんだ米国のNiantic(ナイアンティック)だ。Nianticは、地球そのものを舞台にしたゲーム体験を切り開いて、人々に外出して新しい場所を訪れるきっかけをつくった。
NianticのCEOであるジョン・ハンケ氏は、同ゲームについて会見でこのように語っていた。
「ゲームを通して、世界を違った視点で見ることで、野外での活動を増やし、より健康なライフスタイルを送っていただくお手伝いをしたい。健康なライフスタイルに欠かせないのが、歩く事に加えて良く休むことだと考えています。健康的なライフスタイルの増進を念頭に置いて、開発を進めています」
ニューヨークタイムズは、『ポケモンGO』について、2016年にAR(拡張現実)をゲームに採りいれた先駆け的存在だったとしながらも、「少しおかしな時間に携帯を見入りながら通りを徘徊するという事態が起きた」と指摘。世界でも、モンスターを捕獲するために危険区域にまで足を踏み入れるという事態が発生したり、“ながら運転”による事故が起こるなど、爆発的人気がゆえの社会的な問題もあった。『ポケモンSleeP』は、その教訓を活かし、危険性を取り除き、人々が健全に寝起きをするように設計されているのではないだろうか。そういう意味では、『ポケモンGO』を補完するような存在といえるだろう。
先日、WHOが「ゲーム障害」を病名に正式認定したりと、ゲームに夢中になることは、自制を失い、生活を破綻させうるという警鐘が鳴らされている。そんななかで、ゲームで子供たちを律するというこの逆転の発想は、ゲーム界を走るトップランナーの1社であるポケモンだからこそのアイデアだ。