秋元康プロデュース「劇団4ドル50セント」生配信ドラマスタート! 『あなたがいなくて僕たちは』への期待

 そしてLINE LIVEで生配信されたスマホドラマ『あなたがいなくて僕たちは』は、「劇団4ドル50セントの育ての親であり脚本家/演出家の丸尾丸一郎が不在の中、劇団員が自分たちで企画・台本を作り上げながら進行する」といった内容になっている。第1話の放送を見ると、最初作り込んだドラマが始まるのかと思いきや、よくある雑談配信のような体でスタート。劇団の自己紹介や、視聴者のコメントを拾いながら雑談をしていくなかで、ストーリーが進んでいくというのが予想外であるし、新進気鋭の劇団らしいドラマの方向性に妙に納得する展開となっていた。

 演劇舞台には、“第四の壁”(観客と舞台の間にある見えない壁)を破り、観客を驚かせるなどして緊張感をもたらし観客との一体感を生んでいく演出上の技法がある。この技法は、映画やテレビドラマでも使われたが、やはり画面を通すとどうしても一方向性になってしまうのが20世紀の動画コンテンツの限界だった。

 しかし、現在の動画配信ではユーザーとの双方向性が成り立つ。ニコ生の配信でも、どこまでが台本でどこまでがリアルなトラブルなのかよくわからないほどだった。動画配信は、画面を通したメディアでメタフィクションをやるには最も親和性があるコンテンツなのではないだろうか。とはいっても、ドラマとしての成功例は記憶にない。『あなたがいなくて僕たちは』の第1話を見た限りでは、視聴者を巻き込むと言うよりも『山田孝之のカンヌ映画祭』(テレビ東京系)のようなフェイクドキュメンタリー風のドラマにしたいようにも感じた。

 今後の放送回では、ユーザーとの双方向性をどれほど活かせるかが鍵となるだろう。それによって、“ドラマを生配信で行う”という意味と重要性がでてくるはずだ。単に意見やアイデアを取り入れるのではなく、“第四の壁”の先にあるユーザーを巻き込む何かがあれば。

 LINE LIVEは、『東京ガールズコレクション』や『原宿駅前ステージ』といったティーンが憧れるイベントや劇場の様子を多く配信しているアプリなだけに、若者に向けての劇団の宣伝効果としては抜群のコンテンツだ。新しい時代の劇団として、そして新しいドラマの形として定着していけば、表現の可能性もさらに広がることだろう。また、生配信ドラマが成功すれば、前衛的でも古典的でもない新しい価値観として、演劇界の革命が起きる可能性は十分にあるのではないだろうか。

(文=本 手)

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