米ファーウェイ締め出しは、世界の5G戦略見直しを迫る? 米中貿易戦争はAppleの減益を招くか
米中貿易戦争でAppleは損をする?
今回のアメリカにおけるファーウェイ締め出し策は、関税の引き上げを巡る米中貿易戦争の延長線上で実行されたと見ることもできる。というのも、前述したようにこの政策には経済戦争における一手という側面があるからだ。収束する気配のない米中貿易戦争が長期化すると、テック業界にも目に見える影響が出ることが避けられない。影響を受ける企業の筆頭は、iPhone擁するAppleだ。
Engadget日本版は16日、米中貿易戦争によるAppleの影響を論じた記事を公開した。米中間の関税が現状より引き上げられた場合、中国で組み立て作業を行っているiPhoneの製造コストが上昇すると予想される。製造コスト上昇に対して、対応策はふたつ考えられる。ひとつはiPhoneの値上げ、もうひとつはコスト上昇を同社自身が負担するというものだ。
以上のふたつの対応策を比較した場合、コスト上昇の負担を選ぶ可能性が高いと見られている。というのも、Apple TV+やApple Arcadeといった新サービスのリリースを予定しているので、同社としては値上げによってiPhoneの販売台数を減らすようなことは避けると考えられるからだ。もっとも、コスト上昇を負担する対応策を選んだ場合、同社の利益は減ることになる。同社の減益は、長期的に見ればApple発のイノベーションが起こりにくくなることにつながるかも知れない。
いずれにしろ、アメリカのファーウェイ締め出しをはじめとした米中の経済的対立は、5GやiPhoneといった一般消費者に身近なものにも影響を与えるのであり、決して「対岸の火事」ではないのだ。
■吉本幸記
テクノロジー系記事を執筆するフリーライター。VR/AR、AI関連の記事の執筆経験があるほか、テック系企業の動向を考察する記事も執筆している。Twitter:@kohkiyoshi