『ブレードランナー』に『∀ガンダム』まで手がけた“レジェンド”の作家性を知るーー「シド・ミード展」レポート

「シド・ミード展 2019」レポート

 『ブレードランナー』(1982年)の東洋的でクレイジーな街並み、『トロン』(1982年)の未来型バイク、『エイリアン2』(1986年)の宇宙船、『∀ガンダム』(1999年)におけるヒゲのガンダムなどなど、これらを創造したフューチャー・デザイナーといえば、SF界にその名を馳せる、“生けるレジェンド”、シド・ミードである。

 

そんな、数々のSF映画やアニメーションに参加し、後のクリエイターたちに多大な影響を与えたシド・ミードによる、アイデアスケッチから水彩画、イラストレーションまで、約150点にのぼる作品を展示した、「シド・ミード展 PROGRESSIONS TYO 2019」が、アーツ千代田 3331にて、5月19日(日)まで開催中だ。

 あらゆる「未来的でかっこいい」様々なデザインを、第一人者として手がけ続けてきたシド・ミードの作家性が明らかになる本展。ここでは、実際の会場の展示をレポートしつつ、彼の凄さとは何なのかを考えていきたい。

 『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(1980年)に登場する、巨大な四足歩行の兵器 AT-ATは、じつはシド・ミードの描いた絵を基にデザインされたといわれる。また、ミードは映画版『スター・トレック』(1979年)においては正式に、脅威の機械生命体“ヴィジャー”をデザインしたことで、映画界とのつながりをもつ。このように、ミードは伝説と呼ばれるようなSF映画との関わりが多い。そんな、映画作品での仕事が多数展示されているのが、展覧会を構成するパートの一つ、“The Movie Art of Syd Mead”だ。

シド・ミードのスケッチ(ジャングル・ウォーカー)

 ミードといえばやはり『ブレードランナー』であろう。リドリー・スコット監督の求めに応じて、初めて美術監督として映画に参加したミードは、東洋的な意匠が凝らされた、酸性雨に濡れる都市のヴィジュアルを幻想的かつ退廃的に表現し、感度の高い観客に大きなショックを与えた。

 日本のアニメーション作品では珍しく、北米で異例の売り上げを達成させ、『マトリックス』シリーズにも深く影響を与えた『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995年)を監督した押井守も、『ブレードランナー』から影響を受けていることを認めており、「『ブレードランナー』以降の近未来SF映画で、『ブレードランナー』を意識しない作品なんてあるのか」と語っている。それほどまでにミードのデザインは決定的であり、多数の亜流を生み出しながら、いまだにミードの創造したヴィジュアルを超えるかっこよさを、SF映画界は生み出せていないのが現状だ。

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