KMNZ初単独VRライブに見た“二次元と三次元の壁が溶ける瞬間”

KMNZ初単独VRライブレポ

 現実世界のフィジカルな制約から逃れられるVRライブでは様々な演出が可能なため、アーティストによっては通常考えられない動作でVR空間の特異性を生かす人もいるが、この日のライブに感じたのは、あくまで「リアル」に徹すること。精緻に作り込まれたライブハウス内は現実のクラブやライブハウスのようで、KMNZのパフォーマンス自体も、彼女たちの身体性をリアルに伝えるものになっている。また、そうした「リアルな場」としての強度を楽しげな雰囲気で感じさせてくれたのが、途中に挿入された「ABゲーム」コーナー。ここでは2人がKMNZに関する二択問題を出題し、観客が「A」か「B」かを選んでフロアの左右に分かれるクイズを展開。初級編の答え合わせとして「私たち、KMNZ(ケモノズ)って言うんですよ」「知ってました?!」と伝えると、観客が冗談で「!」とリアクションを返すなど、ファンとの息の合ったやりとりもまさにKMNZらしい。

 最後は彼女たちの定番カバー曲のひとつ、スチャダラパーと小沢健二の「今夜はブギーバック」で終了。観客と記念写真を撮って大団円でライブを終えた。……と思っていたのだが、実は本当のハイライトはここからだった。会場の観客を笑顔で見つめていた2人が突如「私たちもフロアに降りられるらしいよ」「まさかー、そんなことない……」「わー!!」とフロアにやってきて、観客と一緒にライブハウスを楽しそうに走り回る。ついには階段を駆け上がって会場の外に到着。入口の「KMNZ」の文字がピンクのネオンで照らされたロゴを前に撮影タイムをはじめ、観客と握手を交わしたりしながら会場を後にした。ここまでがほんの数分の出来事。少しあっけにとられながらも、現実世界では本来別々の場所にいるはずの観客とワイワイ笑いながら走る2人を見ていると、「二次元と三次元の壁が溶ける瞬間は、こんな“楽しさ”の中でこそ実現するんじゃないか」――。そんな感動が頭を過ぎった。

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 バーチャルYouTuberの多くは、2次元と3次元の垣根を越えて、バーチャルとリアルが“繋がる”ことをテーマにしている。特にKMNZの場合、その魅力はジャパンカルチャーやオタクカルチャー、ファッションやストリートカルチャーに至るまで、様々な場所に向けられた間口の広さを持っていて、クールでアクティブな印象があるLITAと、キュートでインドア派な印象があるLIZの個性も、本来なら違うグループでもおかしくないほど異なるものだ。けれども、その2人が手を取り合って生まれる2次元と3次元を繋ぐ定期券は、おそらく、2人が想像する以上に多くの人々を魅了する力を持っている。2019年のKMNZはどんな活躍を見せてくれるのか。その未来がますます楽しみになるようなライブだった。

■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。

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