バトロワを超えて「クリエイティブ・コミュニティ」化する『フォートナイト』の歩みと可能性

 今月はじめ、人気バトルロイヤルゲームである『フォートナイト』のゲームステージ内で実在の人気DJマシュメロのバーチャル・ライブが行われた。このイベントは、同ゲームがもはやゲームの枠に収まらずに文化の発信地となったという意味で象徴的なものであった。本記事では、ゲームの域を超えつつある同ゲームの魅力を「クリエイティビティ」をキーワードとして考察したい。

クリエイティビティから見たゲームの三分類

 フォートナイトの独自性を考察するにあたり、はじめにゲームがプレイヤーに許容するプレイの自由度、あるいはプレイヤーのクリエイティビティを刺激する度合いに応じて、ゲームを以下のような3つに分類できることを確認したい。なお、以下の分類はあくまでフォートナイトの魅力を考察するための便宜上のものであり、ゲーム分類をめぐって論争を起こすような意図はない。

 バトルロイヤルゲームのひとつであるフォートナイトは、もちろん競技型ゲームに分類される。しかし、最近では同ゲームの創造型ゲームとしての側面が急成長しているのも事実だ。

「創造の箱」を開けた『フォートナイト』

 『フォートナイト』が創造型ゲームとして成長する萌芽は、実のところ、ゲームリリース当初からあった。2017年7月にリリースされた同ゲームは、元々は押し寄せる敵を要塞を立てて迎え撃つPvEゲームだった。こうした当初のゲームコンセプトは、ゲームタイトルに反映されている。『フォートナイト』の「フォート(Fort)」とは、英語で要塞を意味する「fortoress」からとられたものと考えるのが自然である。つまり、リリース時点から「建てる」というクリエイティブなゲームシステムが強調されていた、というわけなのである(PvEゲームの側面は、日本では無料プレイできない『世界を救え』に引き継がれる)。

 その後、『PUBG』の世界的ヒットの影響を受けて、2017年9月にバトルロイヤルモードを実装。クラフト要素のあるバトルロイヤルゲームとして人気を博し、今日に至っている。同ゲームに転機が訪れるのは、2018年7月にプレイグラウンドモードを実装した時である。このモードは、本来はバトルロイヤルゲームにおけるプレイを練習するステージとして設けられたのだが、本来の目的からそれて自由に建物を建てるのを楽しむプレイヤーが多数現れたのだ。そして、2018年12月、ついにゲームステージそのものをクラフトできるクリエイティブモードが実装された。このモードの目的は、名前の通りゲームステージを作ること自体をプレイすることにある。同モードの実装とほぼ同時期に、バトルロイヤルモード内の「ブロック」エリアに採用するステージの募集も始まった。こうした動向は、『フォートナイト』の創造型ゲームとしての側面がクローズアップされる過程と見ることもできる。

 最近では、踏むと音がなる素材を利用して、クリエイティブモードで楽曲を演奏するプレイヤーが出現している。ツイッターで「#フォートナイトクリエイティブ」と検索すると、演奏動画をまとめて見ることができる。そうした動画のなかには、マリオの地上BGM(下のツイート参照)や星野源の『恋』を演奏するものまであるのだ。

 以上のように、おそらくはプレイヤーが良い意味で開発元のEpic Gamesの思惑を超えることで、『フォートナイト』は創造型ゲームとしても成長を続けているのだ。

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