w-inds. 橘慶太×Yaffle(小島裕規)対談【後編】 「楽音と楽音じゃない音の境目が曖昧になってる」

橘慶太×小島裕規による“機材トーク”

 「自分の憧れと癖に違いがありすぎる」(小島)

橘:作業に使うのは純正のソフトが多い?

小島:むちゃくちゃギークな時代があって、なんとか今そこから逃れようとしてるんです。すごい集めてた時代があって。秒で買う、最速でカートに入れるみたいな。

橘:値段を見ずに(笑)。

小島:いいって言われたらすぐ買っちゃうような。

橘:で、今はそれをなるべく避けてる。

小島:はい。今の自分のブームかもしれないですけど、純正だけでやれるのが理想ですね。でも、これしかないっていうものもあるので。そういうのはエフェクター系だとSoundtoysが多いですけどね。ソフトシンセはOmnisphereとか、Avengerとか。

橘:OmnisphereもAvengerも音がいいですもんね。

小島:でも最近はあんまり買わないようにしてます。今はとにかくスピード感が一番かもしれない。

橘:音選びはプリセットから?

小島:プリセットを使うこともありますけど、自分でこういう音っていうイメージがあると、プリセットから探すほうが逆に時間が掛かっちゃうので、作っちゃう方が多いですね。

橘:なるほど。

小島:あんまり目立たない後ろの方の音はプリセットから選んだりもしますけど、やっぱりパッドって使いづらいんですよ。僕がほしい音は和音は担保したくても、別に丸くなってほしいわけじゃなくて。リリースの切れ目が長いとリズムが鈍るじゃないですか。だからパツンと切れてほしいんです。ピアノみたいな役割だけど、音はサイン波みたいな。そこであとはアタックボリュームに、自然界にない感じのエフェクトをかけて空間認識させる、みたいなサウンドが本当は一番好きなんですけど、あんまりないんですよ。

橘:作れないんですかね?

小島:作れると思うんですけど、あんまり需要がないんですかね。

橘:たしかに、アンビエントR&Bっぽいパッドってプリセットにないような。

小島:EDMっぽいものはあるんですけどね。

橘:プリセットを買ったりもするんですか?

小島:Serumとかは買いましたよ。フューチャーベースが出はじめの頃、これってどういうことなんだろうって。

橘:買って波形の感じを見る。

小島:そう。昔仕事で生楽器を入れることも多かったんですけど、その時もファンクの後ろのジェームス・ブラウンみたいな音ってどうなってるんだろうっていうのを見たくて、サンプルパックを買って聴いて、こういうボイシングなんだな、もうわかったみたいな。そういう使い方はよくしてます。

橘:研究のための購入なんだ(笑)。Soundtoysを使うのが多いのは、ミックスではなくて作曲の一部としてエフェクトを使うってことですか?

小島:そうですね。

橘:EQも純正?

小島:EQは純正かFabfilter。UIがいいじゃないですか。

橘:わかる。やりやすい。

小島:でもEQとしていいかと言われると、鈍いなとも思う。

橘:味気ないかもしれない。カットにはすごくいいんですけど、ブーストが微妙かも。だから僕もFabfilterのPro-Qはカットだけに使ってますね。

小島:Q3を買ったんですけど、ダイナミックEQいいですよね(笑)。

橘:EQブーストもします?

小島:結構やります。でもFabfilterではあんまりしないですね。構造がしっかりしてるのでずっとWavesのSSLを使ってて。

橘:UADのSSLもあるんですけど、僕もWavesの方が好きですね。

小島:Wavesは“お母さんの味”というか……。

橘:(笑)。わかりますよ。

小島:入れたら間違いないじゃないですか。音がよくなるとかじゃなくて、ちゃんとやってくれるというか。

橘:安心できるプラグインってことですよね。でもAbletonのEQも音のざらつきがあって好きですけどね。コンプは?

小島:コンプは諦めました(笑)。個人的にUADの1176が一番好きだったんです。パン、パツッて切れてくれるので。で、ずっとCPUが少なくて、DSPに縛られないそういう感じのものを探してたんですけど、探す時間が長すぎて、曲が書けるんじゃないかと思って(笑)。

橘:なかったんだ(笑)。

小島:多分もっと探せばいいものもあるんですけど。でもやっぱり重かったり。重いともうやる気がなくなってくるんですよね。

橘:ああ、僕もUADのReverbがめっちゃ好きなんですけど、めっちゃ重いんですよね……。

小島:わかります。出先で開いた時の絶望感(笑)。

橘:なるべくノートパソコン一つでやりたいタイプですか?

小島:本当はそうなんですよ。でも自分の憧れと癖に違いがありすぎる。もともとは買い集めて要塞を作るタイプなんですけど、憧れてるのはノマドでラップトップだけあればいいみたいなスタイルで。

橘:僕も相当憧れる。

小島:Cashmere Catとか、なんにもないワンルームにでかいKRKのモニターしかなくて。

橘:Mura Masaとかも……かっこいいもんな。

小島:かっこいいですよね。純正だけでやるの。

橘:ステップ入力はやります? キーボードを使う?

小島:ステップ入力はあんまりやらなくて、キーボードかクリックですね。ピアノも弾きます。本当はピアノが一番早いんですけど、出先だと使えないので。

橘:マウスは持っていく?

小島:持っていかないです。トラックパッド・ドレミですね(笑)。

橘:僕も今それに憧れて、それができる環境を作ってるところなんです。最近はわざと鍵盤を使わないで作る曲もあります。でも結局Pro Toolsに変えたのでめっちゃ大変なんですよ(笑)。

小島:やばいですね。Pro Toolsは向かなそう(笑)。

橘:そうなんです。でも動画を見ていたら、海外のトラックメイカーでノートパソコンとPro Toolsだけでやってる人が2~3人いて、この人たちができるんだったら俺もできるんじゃないかと(笑)。でもPro Toolsでやるのはけっこう大変ですね。その点Abletonは楽だったなって。

小島:Jnthn Stein(ジョナサン・ステイン)って人知ってます? アメリカのトラックメイカーで、Abletonの広告動画に出ていたんですけど、Pushがやたら上手いんですよ。ジャズピアノをパットで弾くという。

Using Ableton Push as a Keyboard with JNTHN STEIN | Reverb Demo Video

橘:これはすごい(笑)。

小島:人間に不可能はないんだなと思いましたね。これになんの需要があるのかわからないですけど(笑)。

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