PC版『DIVISION 2』、SteamではなくEpic Gamesストアで販売 クリエイターサポートも適用に

『DIVISION 2』Epic Gamesストアで販売

 昨年12月、人気バトルロイヤルゲーム『Fortnite(以下、フォートナイト)』を開発・配給するEpic Gamesが自ら運営するゲームストアを立ち上げた。そして、ストア立ち上げから1ヶ月ほどで早くもビックタイトルが投入される。注目すべきは、このビックタイトルはあのライバルストアからはリリースされないのだ。

Steamは選ばれなかった

 海外テック系メディア『Ars Technica』は、10日、UbisoftがアクションRPGゲーム『DIVISION 2』のPC版をEpic Gmaesストアと自社運営するゲームプラットフォームUbisoft clubから3月15日にリリースすると報じた。同ゲームは『DIVISION』の続編で緻密なグラフィックで描かれたオープンワールドでのプレイを特徴としており、今回の舞台であるワシントンDCは1:1スケール(つまり実物大)で再現されている(下の動画参照)。

Tom Clancy's The Division 2: Gamescom 2018 Official Gameplay Trailer | Ubisoft [NA]

 同ゲームのリリースに関してもっとも注目すべき点は、ゲームの内容よりも世界最大のPCゲームプラットフォームであるSteamからリリースされないことだ。Steamからリリースされない理由として指摘されているのが、Epic Gamesストアで設定された開発者報酬だ。Steamではリリースされたゲームの売上の70%が開発者の報酬となるのに対して、Epic Gamesストアは88%に設定されている。

 以上の発表に関連して、Epic Gamesの関係者は今後もEpic GamesストアでUbisoft開発のゲームをリリースする予定があることや、ゲーム開発において重要となるコンポーネントをUbisoftと共有していくことを推進することをコメントしている。

クリエイターサポートも適用拡大

 さらにEpic Gamesの配給戦略を指揮するSergey Galyonkin氏は、9日、『DIVISION 2』にクリエイターサポートが適用されるとツイートした。クリエイターサポートとは、フォートナイトにおいて初めて運用されるようになったゲームをプロモーションしたクリエイターに報酬が与えられる制度のことである。この制度を活用すれば、例えばフォートナイトをゲーム実況した動画を制作すると、報酬が得られるのだ。報酬は、Epic Gamesからプロモーションへの貢献度に応じて支払われる。もちろん、同制度のクリエイターになるには同社が行う審査に合格する必要がある。

 DIVISION 2でも同制度が適用されるということにより、認定クリエイターによる同ゲームのプロモーションを期待できる。同制度をUbisoftから見れば、同ゲームのファンが自主的にプロモーションしてくれるというわけである。こうした効果が期待できることから、Ubisoftは今後Epic Gamesとのつながりを重視するようになるだろう。

 また、上記のGalyonkin氏のツイートのスレッドでは、クリエイターサポートはフォートナイトやDIVISION 2だけではなくEpic Gamesストアのゲームすべてに適用されるという説明が追記されている。つまり、これから同ストアでゲームをリリースするすべての開発者は、同制度の恩恵を受けられるのだ。この恩恵は、同ストアをSteamと差別化するのに大きく貢献するだろう。

原動力はフォートナイトプレイヤー

 以上のように、Epic Gamesストアは立ち上がってから1ヶ月ほどで打倒Steamのための施策を次々打ち出している。こうした同ストアの今後に関して、エンタメ系メディアのUS版IGNは考察記事を公開した。その記事は、同ストアの成長を担うのはフォートナイトをスマホでプレイしているような比較的若いプレイヤーだと指摘している。というのも、こうした若いプレイヤーはまだゲーミングPCを購入していないだろうが、初めてゲーミングPCを購入してから利用するPCゲームストアには、すでにアカウントを持っているEpic Gamesストアを選ぶと考えられるからだ。

 また、同ストアは2週間ごとに無料ゲームをユーザに提供している。このサービスもユーザがSteamよりも同ストアを選ぶ動機となると思われる。さらに、今後リリースされるゲームのラインナップも魅力的だ。例えば、2012年にPS3でリリースされた名作『風ノ旅ビト』の新作が近日中にリリースされる。

 ゲーム開発者とゲーマー双方にとって魅力的になりつつあるEpic Gamesストアは、長らく続いたSteamの覇権に挑戦できる地位を急速に築いても不思議ではないだろう。

トップ画像出典:Epic Gamesストア『DIVISION 2』ページより画像を抜粋

■吉本幸記
テクノロジー系記事を執筆するフリーライター。VR/AR、AI関連の記事の執筆経験があるほか、テック系企業の動向を考察する記事も執筆している。Twitter:@kohkiyoshi

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