『ハン・ソロ』やマーベル作品にも参加 VFXアーティスト渡辺潤が語る「ハリウッドの現場」

VFXアーティスト・渡辺潤インタビュー

「自分の名前がスクリーンに出てきた時は嬉しかったですね」

ーー渡辺さんは海外を拠点に活動していらっしゃいますが、制作現場の雰囲気ではアメリカと日本ではどのように違いますか?

渡辺:文化、考え方も違うし、オフィスも、業界全体で見た時にとにかく全てが違いますね。

ーー個々のレベルではどうでしょう?

渡辺:アーティスト個々のレベルでは、日米そんなに変わらないかもしれません。日本でゲームやCMを作りたいという人もいますよね。日本の仕事が好きな人は日本でやる方がいいと思うし、海外でハリウッドの映画をやりたいという人は海外に行くといい。海外にいるから優秀ということはなくて、日本でも世界で通用する人材がたくさんいます。

『アントマン&ワスプ』(c) 2018 MARVEL

ーー渡辺さんは1996年に渡米してから、様々な作品に参加してきましたが、これまでで最も印象的だった作品はなんですか?

渡辺:自分でも挑戦ができて面白かったのは、『スピード・レーサー』です。いろいろな仕掛けを作らせてもらって、それをほかのアーティストに使っていただけたり、ものすごい大変なプロジェクトだったんですけども、面白かったです。また、『ベイマックス』の時は、ディズニー・アニメーション・スタジオで働ける上に、『アナと雪の女王』がヒットした次の年だったので、担当したみなさんと一緒に作業をしながら、『アナ雪』の話を聞けたりしました。アカデミー賞が開催されるドルビー・シアターで完成披露試写会が開かれたのですが、自分の名前が最後に出てきた時は嬉しかったですね。あとは、今回の『ハン・ソロ』です。『スター・ウォーズ』の作品にいつかは関わりたいという願いはあったので、配属されると聞いた時は嬉しかったです。ただ、過去に会社がなくなったりと、大変な思いもしてきたので、本当に働ける日が来るまでは、あまり喜ばないようにしていたんです。前日になって、急に中止とか、断られることもアメリカではしばしばで。現場に入ると喜ぶどころか緊張で、目の前には有名なスーパーバイザーが歩いてますし、ストームトルーパーとかC-3POのフィギュアが置いてあったりしました。今回はスピンオフでしたので、来年の『エピソード9』で、メインの『スター・ウォーズ』にもぜひ参加したいと願っています。

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(c) 2018 & TM Lucasfilm Ltd.

ーー30本以上の作品に参加してきた渡辺さんが、今だから思うVFX制作の魅力は?

渡辺:一つは実在しないものを作ることができること。作業を始める前まではグリーンスクリーンに俳優さんだけだったりして、最終的にVFXのチームが背景を埋めて画を作っていくわけです。画が完成した時は、感慨深いですよね。先ほどセミナーの中で「ストーリーテリングが大事」と話しましたが、ストーリーが成り立って、進んでいくのをヘルプする。それが面白いところですよね。日本でテレビコマーシャルの仕事をしていた時は、“CGをやっている”という意識があった。海外に行って、映画を担当するようになり、チームで映画を作っているという意識に変わったのは自分でも興味深い点だと思います。

ーー最後に渡辺さんの今後のビジョン、目標を聞かせてください。

渡辺:当初の目標は、映画のスクリーンに名前が出たら死んでもいいと思ってたんですけど、本当に出たら死ねなくなっちゃいまして(笑)。次はディズニーとかI.L.M(インダストリアル・ライト&マジック)で働けたら死んでもいいと思っていたら、幸いそれも達成されて、また死ねなくなっちゃいまして(笑)。次は、自分のスキルを上げて、ご縁とタイミングを大事にしながら、さらにいろいろな作品に携わっていければとは思ってます。

(取材・文・写真=渡辺彰浩)

■リリース情報

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』
MovieNEX(4,200円+税)発売中
デジタル配信中
(c) 2018 & TM Lucasfilm Ltd.
https://starwars.disney.co.jp/movie/hansolo.html

『アントマン&ワスプ』
2019年1月9日(水) MovieNEX(4,200円+税)発売
2018年12月19日(水) 先行デジタル配信開始
(c) 2018 MARVEL
http://marvel-japan.jp/antman-wasp

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