人間とAIは結婚できるか? 初音ミクと「Gatebox」が示した未来の恋愛

 さて、『her/世界でひとつの彼女』のラストシーンで、セオドアは現実の女性と向き合う道を選び、別れた奥さんへ溢れる感謝の気持ちを言葉で伝えている。AIとの恋愛を経て現実に戻るくだりには、「本当の恋愛は人間同士にしか育まれない」「人間は人間と向き合うべき」という価値観が見え隠れしている。しかし、恋愛が思い込みであり狂気であるなら、AIとの恋愛だって受容されて然るべきではないだろうか。AIが高度化して情緒を持ち得たなら、なおさらである。

 現状、「Gatebox」のユーザーの多く(例の男性も含めて)は、今の単純な会話ができるAIでも満足しているという。会話が楽しめるだけで、相手に感情があると“想像”することができるし、それによって恋愛感情を抱くこともできるようだ。現実の恋愛がそうであるように、大事なのは自分がどれだけ夢中になって相手に愛情を注ぐことができるか否かなのだろう。そして、感情を持つAIでなくても恋愛感情を抱けるのなら、もしさらに高度なAIができれば、より多くの人々が同じ道を選択する可能性はますます高くなっていくはずである。

 初音ミクとの“結婚”は、当然だが今のところ法的に認められたものではなく、男性公務員が世間的に公表をしたというだけの話である。しかし、「Gatebox」のようなガジェットがどんどん進化していけば、AIと結婚することも選択肢のひとつとして、社会的に認められる時代がくるのかもしれない。

■セツ・ミチヲ
1980年代生まれ。筆名(ペンネーム)の由来は、以前某媒体で使っていた筆名のアナグラム。基本もの好き。フィクションに没頭したあと、現実世界が美しく思えてくる感覚が好きです。

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