ゲーム配信の雄=Twitchは、なぜ日本市場を重要視するのか? 同社SVPマイケル・アラゴン氏に聞く

インタビュー:Twitchが日本市場を重視する理由

 いまや人々を魅了するエンタメの一つになった「ゲーム配信」。そのトップランナーといえば、ゲーム専門の動画配信プラットフォームとして成長を続けてきた『Twitch』だ。2017年には日本オフィスも立ち上がり、日夜、多くのストリーマーたちが生配信を行なっている。ゲームをスポーツのように楽しむ「eスポーツ」というムーブメントになくてはならない存在であり、クリエイター/ストリーマーが収益化するための仕組みづくりにも注力している同社だが、日本市場をどう捉え、今後どのような展開を考えているのか。東京ゲームショウ2018の出展に合わせて来日した、Twitch社シニア・ヴァイス・プレジデントのマイケル・アラゴン氏と、コンテンツ部門のデベロップメント・ゼネラルマネージャーのケンドラ・ジョンソン氏に話を聞いた。

※トップ写真右がマイケル・アラゴン氏、中央がケンドラ・ジョンソン氏。左は、通訳を担当してくれたTwitch Japan・広告営業ディレクターのジョン・アンダーソン氏。

日本の視聴者数は世界トップ3に入る

ーー2017年に日本オフィスができて以降、Twitchはどのように成長しているでしょうか。

マイケル・アラゴン(以下、マイケル):2つの指標から、Twitchは日本市場で急速に成長していると言えます。第一に、視聴者数/視聴時間。視聴者数では世界のトップ3に入り、1日の平均視聴時間はおよそ100分と、こちらも非常に長くなっています。二つ目として、配信者が収益を得られるアフィリエイトプログラムの参加者が、昨年の200人から2000人まで増加。また、収益化に向けて様々なサポートを行うパートナープログラムの参加者も80%増加しています。

 そして現在は、ゲーム配信だけでなく、ゲーマーが好きな他のコンテンツにも力を入れていこうと考えているところです。いわゆるIRL (In Real Life)ーー日本語で言うと「雑談」や「日常」という意味になるかもしれませんが、楽器演奏や町歩き、料理動画なども含めて、よりクリエイターが魅力を発揮し、視聴者が楽しめるコンテンツを拡充していくことができればと。

ケンドラ・ジョンソン(以下、ケンドラ):例えば、今夏の「EVO」(毎年ラスベガスで行われる、世界最大級の格闘ゲーム大会)で、プロゲーマーの梅原大吾さんが現地の映像を届ける配信を行い、大きな盛り上がりを見せました。このように、実際にゲームをプレイしているコンテンツだけでなく、その周りにある楽しいことも提供できるようにしていきたいと考えています。

Daigo the BeasTV 『Evo 2018 特別配信』より

ーー大会も含めたゲーム配信による、Twitchのeスポーツシーンへの貢献は非常に大きいと思います。日本のeスポーツへの取り組みについては、どう捉えていますか?

ケンドラ:PCゲーム中心の海外と比較して家庭用ゲーム機のプレイヤーが非常に多く、また格闘ゲームに関心が集まるのも日本の特徴です。まずは日本の格闘ゲーマーがより海外で発信できるように支援を行い、また海外のノウハウも生かしつつ、各団体と協力してゲーム大会も開くなど、日本のeスポーツシーンを盛り上げられればと考えています。

世界は日本発のコンテンツに注目している?

ーークリエイターによる配信も含め、日本発のコンテンツには、海外に発信する上でどうしても言語の壁が出てくると思います。

ケンドラ:そうですね。現状では、日本語の配信をミラー配信やクロスストリーミングで世界に発信できるようにしており、日本語が堪能な海外の視聴者が有志で翻訳&配信していることもあります。人気クリエイターになれば、通訳をつけての放送もありますが、よりコストをかけず、手軽に海外への発信ができるようなシステムを作らなければと考えているところです。

ーー梅原さんをはじめ、日本の格闘ゲーマーにはタレント性の高い人も多いと思います。そうした人たちの配信は、海外でも需要があるでしょうか?

マイケル:格闘ゲームというジャンルについては、海外では日本ほどの人気はありませんが、「日本のゲーマーが素晴らしい」という認識は広くあります。実際、海外から日本の配信を観ているユーザーも多いですし、「ゲーム関連のコンテンツを観るなら、日本は欠かせない」というのは当然です。Twitchでは『鉄拳7』の大会も開催していますが、日本のコンテンツをさらに、世界にアピールしていきたいと考えています。

ーー現在、日本オフィスではどんなことに注力していますか?

ケンドラ:Twitchは「クリエイターズファースト」を理念としており、まずはパートナーの配信と収益化を支援することに力を入れています。日本のストリーマーを海外に連れていって配信できるような体制も整えているところで、海外でもファンを獲得できるようにしていきたいですね。また、9月からは日本のゲームメーカーさんに、もっとTwitchを使っていただけるように働きかけるチームも立ち上がりました。

マイケル:「クリエイターキャンプ」として毎月、配信の基本から、視聴者、収入源の増やし方まで解説していますので、こちらも活用していただきたいと考えています。

「Twitchクリエイターキャンプ」より

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