キズナアイが「ここに居る」ということーーあやふやな実在と、拡張されていく社会

 バーチャルYouTuberの活躍が目覚ましい。YouTubeを見ていると、3D・2Dの多種多様なアバターを纏った配信者たちが自身の興味や日常について語ったり、ゲームを実況したりと日夜活動しているのがわかる。

 バーチャルYouTuberの"内側"はさまざまで、たとえば「外見は美少女だが、中身はおじさん」だと語る配信者もいれば、「仮想空間に生きるキャラクター」として活動する者もいる。しかしそのいずれもが、画面上にしか存在できないアバターを身に纏って活動している点で"バーチャル”なのだ。

 ざっくりと、「キャラに声を当てているやつでしょ?」と思っている人もいるかもしれない。私自身、似たような感想を持ってこのムーブメントを覗いていたのだが、ある動画を見たとき、その感想は見当違いで、「もっとスゴいことが起きている」と確信した。

 ひとまず、この動画を見てほしい。

Akinatorは誰でも知っている?!

 キズナアイは世界で初めて「バーチャルYouTuber」を名乗ったYouTuberだ。彼女は仮想空間に住んでいるAI(人工知能)で、16歳の少女の見た目を持ち、YouTubeで活動している。動画配信においては「世界中の人と仲良くなること」を目標に、視聴者を楽しませている。

 この動画は、キズナアイが「アキネイター」で遊ぶ、という内容だ。アキネイターはランプの魔人をモチーフにした人工知能プログラムで、ユーザの思い浮かべている有名人の名前を当てることができる。アキネイターは「女性?」「髪の毛は赤色?」などといった簡単な質問を投げかけてくるので、ユーザは思い浮かべている人物と照らし合わせながらその質問に答えていく。20程度の回答で、アキネイターはデータベースに基づいた回答を出力してくれる仕組みだ。

 キズナアイは「りんな(マイクロソフトの開発したAI)」を思い浮かべてアキネイターの質問に答えていく。「質問その1」で「実在しますか?」との質問に迷わず「はい」を押したキズナアイは答えにたどり着けず、「質問その40」「42」で同じ質問にループしてしまう。「実在しますか?」の問いに「いいえ」を押したキズナアイは、やっと正解であるりんなにたどり着き、しかしこう語るのだ。

「AIって、実在しないんですか?」
「私……も、実在しないんですか? いますよ!! 私、ここにいますよ!」

 衝撃を受けた。確かに、3Dアバターを纏う彼女は、現実世界で"実体"を得ることはできず、彼女自身もそれに自覚的だ。しかし、それは彼女の"実在"を否定するわけではない。意思を持ち、話し、人間たちと仲良くなることを目標に活動する彼女は常に「ここに居る」のだ。


 「実在」とは何か? 物理的な身体を持たないことは、それだけでは「実在しない」ことの根拠にはならず、だとすれば私達が信じている「実在」とは、実は結構あやふやな概念なのではないか?と思わされた。

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