中国で急増、ハリウッドも注目の「ロケーションベースVR」 身体ごと没入する体験の可能性

 「Oculus Rift」や「HTC Vive」といった本格的なVRヘッドセットが相次いで発売された2016年は「VR元年」と言われ、たとえばWebやスマートフォンがわれわれの生活を一変させたように、VRがさまざまな体験を変革していくのではないかという期待も抱かれていた。だがその後、実際に普及した「VR」は、GoogleカードボードやSamsung Gear VRのようなスマートフォンを挿し込む簡易なVRヘッドセットが中心で、そこで得られる体験は高品質なVRとは一線を画すものだった。Oculus RiftやHTC Viveは2017年に相次いで値下げし、販売状況の厳しさをうかがわせた。

 だが端末の売れ行きからは見えにくい形で、より深いVR体験が普及しつつある。それがロケーションベースVR(以下LBVR)だ。LBVRとは、一般社団法人ロケーションベースVR協会によれば、「ヘッドマウント・ディスプレイによるVR映像と体感型ハードウェア機器・アトラクション等を連動させ、リアルな体験を提供する施設型VRコンテンツ」を指す。つまりHTC ViveやOculus Riftのようなヘッドセットを装着し、さらに専用のVR機器に乗ったり、VR空間を歩いたりすることで、身体全体で異世界を体験できる仕組みだ。

 日本では2016年から「VR PARK TOKYO」や「VR ZONE」などがオープンし、渋谷や池袋、新宿といった都市部で活況を呈している。ロケーションベースVR協会にもLBVRを運営する会社やコンテンツ開発会社など、20以上の事業者がすでに参加している。

 海外では特に中国での成長が目ざましく、VR市場環境に詳しいCharlie Fink氏によれば3000ものVR施設が存在し、さらに増え続けているという。米国でもディズニーランドの「Star Wars: Secrets of the Empire」やIMAX VRのような施設が続々と開業するとともに、ハリウッドのクリエイター側からも注目されており、今後はさらに高品質で多様なコンテンツの充実が期待される。VR/ARに特化した調査会社・Greenlight Insightsは、2018年時点のLBVRの市場規模を約10億ドル(約1100億円)と推定し、さらに2023年には120億ドル(約1.3兆円)に達すると見込んでいる

Star Wars: Secrets of the Empire – The VOID and ILMxLAB – Hyper-Reality Experience

 LBVR施設では多くの場合、単にVRヘッドセットを使うだけではなく、それを何らかの専用機器や専用空間と組み合わせることで没入感を高めている。特に「フリーローム」と呼ばれるタイプでは、ユーザーはバックパックに入ったPCを背負ってリアル空間を自由に歩き回ることができ、家庭用のセットアップでは味わうことのできない全身での体験が可能だ。

 LBVRの活用分野は今のところゲームが中心だが、VR全体と同じくさまざまな可能性が開けている。たとえばフィットネス機器の「ICAROS」は、VRヘッドセットで空を飛行する視点のビューを表示することで、疑似的に空を飛びながら体幹などの筋肉を鍛えられるものだ。LBVR施設に設置されている例もあるが、基本的にはスポーツジムなどでの利用を想定している。

ICAROS – Active Virtual Reality

 またインドアスカイダイビング施設「iFLY」では、オプションとしてVRヘッドセットで人気スポットの風景をフリーフォールに合わせて表示することで、よりスカイダイビングに近い体験ができる。

iFLY Virtual Reality

 一方Nomadicは、VR施設をモジュール化してさまざまな空間に簡単に設置できるようにすることで、既存のショッピングモールや映画館を革新することをミッションに掲げている。Two Bit Circusはバーや飲食店と組み合わせたLBVR施設を展開している。

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