「新しいマスメディアを作る挑戦権は得た」AbemaTV編成制作本部・谷口達彦インタビュー
ドラマ『会社は学校じゃねぇんだよ』に込めた決意
――昨今は、テレビ界をはじめ、芸能界その他、社会情勢的にも、さまざまな分野で“再編”の動きがあるように思います。そのなかで、AbemaTVの存在意義や注目度、さらには期待が増しているようなところもあるのでは?
谷口:「AbemaTVは、また面白い仕掛けをしてくるんじゃないか?」といった、若者たちにとって、自分たちのほうを向いたメディアであることの期待とプレッシャーは、日々感じているところではありますね。そういう雰囲気、期待値や情勢のなかで、ちゃんと信頼されるメディアになっていかなくてはならないということは強く感じているところです。
――そこは、2年前とは、全然状況が違いますよね。
谷口:そうですね。開局当時は、おっしゃる通り、“何者でもない”メディアだったので、どんなサービスかわからないような状況だったと思いますが、開局半年以降ぐらいから、ただ番組をラインナップするだけではなく、研ぎ澄ませて尖らせた、わざわざ観にくるべきコンテンツを作ろうという体制がだいぶ整い、『亀田興毅に勝ったら1000万円』のような企画が出たり、そういう流れになってきました。
――『亀田興毅に勝ったら1000万円』や『72時間ホンネテレビ』など、いわゆる特番というか、ある種、打ち上げ花火的な番組に目がいきがちですが、編成全体で見ると、アニメ、将棋、将棋、釣りなどのレギュラー番組も、かなり充実していて……谷口さん的に重要と思うのは、どのジャンルの番組になるのでしょうか?
谷口:開局当初からアニメは人気で、今でも非常に人気があるので、それはひとつの柱として、ずっと伸びていて支持もいただいている、メインのコンテンツの一つになっています。ニュースがあって、オリジナル番組あって、アニメをはじめとした様々なジャンルのチャンネルがあるという編成ですね。
――アニメは先ほどおっしゃった若者層と、相性が良かったのかもしれないですね。
谷口:そうですね。もともと、そういうユーザーがネットには多かったというもあると思いますが、相撲や将棋など、従来からあるジャンルのものにしても、通常のテレビだと、どうしても編成的に限りがあるというか、制限のあるメディアの場合は、将棋も一局10時間を全部放送できないわけです。しかし、AbemaTVでは放送尺に制限がないので、観たい人が、そのまま全部観られるという特性を活かした形にはなっていて。たとえば、相撲は素晴らしい国技ですが、なかなか若者層には馴染みがなかったと思うのでAbemaTVをきっかけに興味を持ってもらいたいと思っています。
――ある種の様式美というか、テレビ中継のフォーマットも、ある程度決まっていましたし。
谷口:そうですよね。それがいい悪いということではなく、若者がもっと観やすいように、熱狂できるようにするという点で、AbemaTVならではのやり方で届けられたところはあったと思っていて。地上波では放映されない取り組みから放送していたり、懸賞が見えたりなど、そういう面白みもありますし、ちょっと前にバズっていたクリエイティブも格闘ゲームのように見せるなど、若者に届きやすいような仕掛けをしていたりするんですよね。そういうことを通して、新しいファンの開拓や、そのコンテンツの厚みを出せているのではないかと思います。
――定期的に、打ち上げ花火的な特番もやりつつ、そういった安定したコンテンツもきっちり作り続けると。
谷口:特番に関しては、おっしゃる通り、ある種打ち上げ花火的なところがあるので、要はその熱狂が過ぎ去ったとき、そこに残った人たちが、ちゃんと魅了される通常のレギュラー番組がないといけないので、その規模を拡大させていくようなイメージです。
――そういうなかで、最近はオリジナルドラマにも力を入れていて、4月に放送を開始した開局2周年記念ドラマ『会社は学校じゃねぇんだよ』が、かなり話題になっています。
谷口:おかげ様でご好評いただいています。自分たちで言うのは恥ずかしいのですが、相当面白いものができたと思っていて、個人的にも推しています(笑)。AbemaTVの開局当初から、いつかオリジナルドラマを制作したいということは当然考えていましたが、他のバラエティ番組に比べると、制作体制や準備期間、あと実際の制作期間が違ったりするので、そういった準備段階を経て、ようやく今年からオリジナルドラマを放送をはじめました。これが三作目になります。
――『#声だけ天使』、『やれたかも委員会』、そして『会社は学校じゃねぇんだよ』の3本ですね。
谷口:はい。若者向けにドラマをやりたいというのは、もともと考えていたのですが、このドラマに関して言うと、まだ“何者でもない若者が何者かになっていく”過程の中で、そのときの夢や友情、恋愛、金などの欲求を、リアルに表現するというのが、コンセプトになっています。今までのIT企業を舞台としたドラマは、ちょっと芯を捉えてなかったり、わかりやすくするために、リアリティの追求がそこまでなされてないようなものが多かったのですが、僕らはまさに当事者だったりもするので、そこはしっかり描きたいと思いました。この『会社は学校じゃねぇんだよ』というドラマに関しては、藤田の著書が原作になっていて、自伝的要素もあるので、その点もふまえて芯を捉えた描き方ができていると思います。
――反響はどうですか?
谷口:反響は相当いいです。最初に言った通り、YouTubeにもドラマをアップしているのですが、再生回数も多く、AbemaTVで編成しているオリジナルドラマとしては、過去最高のスタートになっています。
――先ほどの編成会議の話、そして開局2周年記念でこのドラマをやることなど、藤田社長の嗜好やキャラクターみたいなものが、AbemaTVの随所に反映されている感じがありますよね。
谷口:そうですね。ドラマの冒頭にも「仕事に熱狂する全ての若者に捧ぐ」という藤田の言葉を入れましたし(笑)。この作品を通じて若者が「俺もがんばろう」と気合いを入れてもらいたい。この作品の熱気を感じてほしいと思っています。また、この作品でAbemaTVを判断してもらっても構わないという、それぐらい覚悟を決めて作っていますという姿勢の表れでもあります。
――それも含めて、AbemaTVの「本気度」は、かなり視聴者に伝ってきているのでは?
谷口:視聴者には見透かされてしまうことってあると思うんですよね。何となく作った企画や番組、編成など、熱のこもっていないものは視聴者には伝わってしまうと思っています。
――特にネットの世界はそうですよね。というか、その感覚が、AbemaTVにはすごく強くあるように思います。
谷口:確かに、それはあるかもしれないですね。長年インターネットサービスを運営してきて得たノウハウを活かすことや、ユーザーファーストという考え方は、意識しながらサービス運営しています。
――最後に、今後の目指していく目標についても聞かせてください。
谷口:もちろん、個別の企画はいろいろ用意していますが、「俺もAbemaTVでヒット番組を作りたい!」という情熱を持ったクリエイターの方々とお仕事をして、そういう熱をもったクリエイターを、これからどんどん増やしたいと思っています。それによって、景色がまた変えられるはずなので。今、そういう人を探しているところですね。先ほど言ったように、地上波のテレビと並ぶクオリティの番組を制作していくということは重要視していて、「AbemaTVで、何となく好きなことをやりたい」というよりは、さらにその先にいくような話ーー「俺もAbemaTVでヒット番組を作りたい!」という思いを持った未来のクリエイターの方々と仕事をしていきたい。そうして、さらに面白いものを作っていきたいと思っています。
(取材・文=麦倉正樹)
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