ニューヨークに“未来の遊び”を探すーーVRゲームセンター「VR World」体験レポート
チームプレイに潜む大きなポテンシャル
特別なデバイスや装置を使ったVRゲームはやはり人気を集めていた。来場前に非常に興味を持っていたのがVR飛行ゲーム「イカロス」だ。
体幹の筋肉を使ってマシーンを動かし、VR世界で空中飛行をするというゲーム。5分ほどかけて12個の宙に浮いたフープの中をくぐったがかなり難しく、筋肉も使った。
ゲームだけどエクササイズになる、という触れ込みは嘘ではない。しかし操作が非常に難しく、360度の視界が上下左右に自由に動き回るため、一度重心を崩して変な方向に回り始めると元に戻るのに一苦労する。友人は初めて1分も経たない間にぐるぐると大混乱を起こし、乗り物酔いを起こして中断することになった。
慣れてしまえば割りと快適に空中飛行できるのだが、慣れてしまうとそれほど面白みも無くなってしまった。ゲームとしては特別な仕組みやデザインがあるわけでもなく、ただ宙に浮くフープをくぐるだけなので中毒性は低いと言える。
しかし大きなポテンシャルを感じたのが複数のプレイヤーで同時にプレイするゲームだ。襲いかかってくるモンスターやエイリアンを射撃するシューティングゲームやレーシングゲームは人々が列を作って順番待ちをしていた。
広いスペースで両腕を振り回しながら次々と襲いかかってくる敵を撃つことができるのはVRゲームセンターの魅力の一つだろう。自宅でもできるゲームもあるが、二つのヘッドセットを所有するとなるとかなりのコストがかかる。大声で騒ぎながら協力してプレイするVRゲームにはVRゲームセンターのポテンシャルが感じられた。
中でもゲームセンターという性質をよく活かされていたのが4人で同時にプレイするゾンビ・シューティングゲームだ。プレイヤーたちは背中合わせに円を作って外を向いており、彼らに向かって進んでくるゾンビたちを射撃する、というものだ。脚を動かすことなく、かつ360度の視点を活かした見事なシューティングゲームとなっていた。自分の目の前のゾンビを撃ち倒した後、友人たちが無事かどうか振り返って確認して、彼らの視界に入っていないゾンビを撃ってサポートする。そして自分の正面に振り返るとゾンビがすぐ目の前まで近づいてきている!といった展開はVRならではだ。
しかしこういった複数プレイのVRゲームでも、プレイヤー間のコミュニケーションはかなり難しい物があった。耳はヘッドフォンで塞がれており、ゲームのサウンドが流れている。他のプレイヤーに大声で話しかけても視線を合わせることもなければ、果たしてこちらの声が聴こえているかも定かではない。生身のプレイヤーは見えないので、どのプレイヤーが誰かも区別がつきづらい。VRゲームセンター用に複数プレイヤー間のマイク通信もできればもっと楽しくなるのに…と、プレイするほど「こうなったらもっと楽しいのに」と色々なアイデアが浮かんでくるのはゲームにハマりつつある証拠だろう。
混み具合で満足度が大きく変わる
2時間チケットが39ドル、これに前述のMOVEOシミュレーターのチケットを付けると54ドルだ。全日パスは59ドル、MOVEO付だと74ドルとなっている。ちなみにMOVEOに一度乗るだけのチケットは25ドルだ。
当然だがどれほどアトラクションを体験できるかで満足度は大きく変わるだろう。ゲームや展示の中には言い訳のように設置されたものもある。順番待ちは一度に一アトラクションにしか登録できないので、一つプレイするたびに何十分も待つ、ということになりかねない。週末は開店前から列を作るほどの人気になっており、常に入場制限がかかっている。
平日ならそれほど混雑はしないので、VRに興味がある人々には良い遊び場所かもしれない。自宅で既にVRゲームをプレイしているハードコアなVRゲーマーの場合、単独プレイで遊ぶには物足りないだろう。複数プレイで場所と時間を有効活用できるゲームが今後、拡大されると全く新しいゲームセンターとして発展する可能性があると感じられた。
■塚本 紺
ニューヨーク在住、翻訳家・ジャーナリスト。テック、政治、エンタメの分野にまたがる社会現象を中心に執筆。
参加媒体にはDigiday、ギズモード、Fuze、GetNavi Webなどがある。
Twitter:@Tsukamoto_Kon