ニューヨークに“未来の遊び”を探すーーVRゲームセンター「VR World」体験レポート
「VR元年」と呼ばれた2016年から1年が経ち、主要なVRハードウェアが出揃ったところで世界の大都市に出現し始めたのが広いフロアーに様々なVRゲームを体験できるブースを複数設置した「VRゲームセンター」だ。
東京でもVR ZONEが話題になっているが、ニューヨークではマンハッタンの中心部、韓国人街のど真ん中に大きく「VR World」というVRゲームセンターが昨年夏にオープンした。米Viceには「アメリカ最大のヴァーチャル・リアリティ体験センターがオープンした」と取り上げられ、ニューヨーク・タイムズも長文記事で世界各国からの観光客が楽しんでいる様子を紹介した。
90年代風デザインとバー
マンハッタンの34丁目と5番街。エンパイアステートビルからも近く観光客で平日も賑わうこのエリアのど真ん中にVR Worldは建っている。
中に入ると内装からスクリーンにイスなどに若干の安っぽさが目につく。「未来の遊び」を予想して宇宙船のような空間を想像して訪れると肩透かしをくらうだろう。
しかしVR Worldはそれを見事にデザインの一部として活かしている。コンクリートそのままの灰色のフロアーにケバケバしく蛍光灯が光を放ち、そして90年代のダンスヒットが流れていると安っぽいソファーや目に見えるケーブル群もインテリアの一部のように気にならなくなる。一階の奥にはバーも備わっており、IDを見せればお酒も飲める。コートやジャケットを掛けられるラックも無造作に放置されており、90年代のニューヨークの安いクラブに来たような感覚を覚えた。
自宅用VRゲームと特殊な乗り物ゲームが半々
入場すると手首にチップが挿入されたリストバンドを付けられる。フロアーには数十のブースが設置されており、自分がプレイしたいゲームがあればそこに行ってリストバンドでタップすれば自動で予約ができる。自分の順番が近づけば携帯にメッセージが届くので、ゲームの前で列に並ぶ必要もない。
ブースとは行っても基本的にはテレビスクリーンが壁にかかっており、コントローラーとヘッドセットをスタッフに渡されるだけだ。ブースの半分くらいは市販の自宅用VRゲームだったことも驚いた。自宅でVRヘッドセットを所有しているゲーマーにとってはこういったゲームに魅力は感じられないだろう。
オープンから半年以上が経ったVR Worldだが、アトラクションのうちいくつかは故障中で動かなかった。中でも目玉のアトラクションとして正面に飾られている「Moveo VRシミュレーター」がその日、停止していたのは他のゲーマーたちも残念がっていた。
やはりわざわざお金を出してゲームセンターに来るのだから、自宅では味わえないVR体験をしたいと考えるのが普通だろう。VR Worldはそういった意味ではスペースを持て余している感が拭えなかった。
中二階にはVRの歴史、なる展示がされており、VRで見られるドキュメンタリーなども用意されていたが、誰一人として視聴していなかった。おそらく順番待ちをしているゲーマーたちの時間潰しとして設置したのだろうが、機能しているようには思えない。このスペースでもVRゲームを展開すればゲーマーは喜ぶだろうが、そうすると順番待ちの時間をどうするか、という問題は解決しない(とは言え現時点の展示でも順番待ちの問題解決にはなっていないのだけれど)。