『豊臣兄弟!』家康が主役の異色回に 松下洸平が体現した“最強のライバル”としての覚悟

NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』第34回「最強のライバル」は、家康(松下洸平)を物語のメインに据えた珍しい回。第32回「賤ヶ岳の決闘」での利家(大東駿介)、第33回「北庄城の別れ」の勝家(山口馬木也)と市(宮﨑あおい)のさらに上をいく、羽柴軍がどこかヒールに見えてくるほどに、家康が主人公の回となっている。

特筆すべきは、“逆臣”の秀吉に反旗を翻す家康の勇ましい絶叫と鋭い視線だ。第34回は、羽柴軍と織田・徳川の連合軍が激突する「小牧・長久手の戦い」が起こるまでを描いたエピソード。史実では戦の直接的なきっかけとなったのは、信雄(山脇辰哉)が家臣・津川雄光(早瀬栄之丞)を秀吉(池松壮亮)と内通していたとして切り殺した、いわゆる「三家老惨殺事件」にある。羽柴との取次役にあった津川を手にかけることは、秀吉への宣戦布告。『豊臣兄弟!』ではその裏で家康が暗躍していた、という描き方になっている。
そこに起因しているのは、家康の嫡男・長丸(のちの徳川秀忠)を養子に差し出せという羽柴側からの申し入れだ。小一郎(仲野太賀)たちにとっては、養子は家と家を結ぶ架け橋の象徴。しかし、家康にとってこれ以上大切なものを“奪われる”ことは耐えられなかった。第34回は冒頭から家康と長丸が楽しそうに戯れるシーンから始まる。正室の築山殿や長男の信康に続き、長丸だけは失いたくないという思いから、家康は“奪う”側へとまわることに決めた。

8月5日に放送された『歴史探偵』(NHK総合)の『豊臣兄弟!』とのコラボSPにて、VTR出演した松下洸平は、演技として相手の目を見ないことを意識していることを明かしている。そこには喜怒哀楽が存在していない、感情を押し殺している家康像がある。そこから感情を爆発させる今回。「よきお覚悟でござる」と信雄を見つめ、ニヤリと笑う家康はもはや別人のよう。変わらず飄々としながらも、酒井忠次(天野ひろゆき)や榊原康政(栗原類)、井伊直政(阿久津仁愛)、本多忠勝(夏生大湖)といった“徳川四天王”、家臣団の前では威厳を見せつける。虚ろな眼差しだった家康が覚悟を決めるまでの演技プランが見事だ。
また、第34回では竹千代として幼少期から現在に至るまでの家康の過去が描かれる。信長(小栗旬)、秀吉に並ぶ流石の“三英傑”という扱い。登場するのは竹千代こと家康、幼いころから近習として仕えてきた石川数正(迫田孝也)、そして第4回ぶりに思わぬ形で再登場を果たすこととなる今川義元(大鶴義丹)だ。義元のもとで人質生活を送っていた家康は、義元から籠に入った鳥を授けられる。自身にとって癒しとなっていたその愛鳥を、元服のタイミングで家康は義元から自らの手で殺せと命じられる。背けば、自らが命を落とすことになる――家康は涙を落としながら鳥を掴むがすぐに離してしまう。

その後、外から聞こえてくる銃声。撃ち落としたのは幼い頃からのライバル・今川氏真(三河悠冴)だった。生きるも死ぬもその者の腹ひとつ。家康が諦観の念を抱くようになったのはここから。けれど、数正はいつの日にか家康が武家の頂に立つ時が来ることを信じていた。「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」は、三英傑においての、家康の性格や忍耐強さを表した句であるが、あの時の鳥が大空に向かって飛び立つ描写は、家康にとっての好機、覚醒の時を示すメタファーのようにも思える。
第34回は新キャラも続々と登場。先述した家康の家臣団のほか、秀吉たちの最後の敵として立ちはだかる北条氏政(谷原章介)、そして第35回「秀長誕生」の予告には豊臣秀次(山田涼介)が初登場。宮部継潤(ドンペイ)のもとに差し出されたあの万丸であり、養子の話題がここに着地するのが見事。そして、この先には数正が秀吉に寝返る未来も待っている。特別番組『豊臣兄弟!SP“家康軍団”三河に見参!!』(NHK総合)では演じる迫田孝也が「最後までお仕えしたい」と明言はしていたものの、史実では小牧・長久手の戦い後に、出奔し豊臣の家臣になったとされている。秀吉が権威の象徴として建てた大坂城を巡る様子や変わっていく家康を見つめる眼差しといった数正の姿も印象的に映し出されており、その動向も心中がどのように描かれていくのかにも注目だ。
■放送情報
大河ドラマ『豊臣兄弟!』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/毎週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:仲野太賀、池松壮亮、吉岡里帆、浜辺美波、白石聖、坂井真紀、宮澤エマ、倉沢杏菜
大東駿介、松下洸平、中島歩、要潤、山口馬木也、宮﨑あおい、小栗旬ほか
語り:安藤サクラ
脚本:八津弘幸
制作統括:松川博敬、堀内裕介
演出:渡邊良雄、渡辺哲也、田中正
音楽:木村秀彬
時代考証:黒田基樹、柴裕之
プロデューサー:高橋優香子、舟橋哲男、吉岡和彦(展開・プロモーション)、国友茜(広報)
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.web.nhk/tv/pl/series-tep-P52L88MYXY
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