宇野維正の映画興行分析

初登場1位『まどマギ』新作映画が喚起する、公式からの「ネタバレ禁止」問題

 8月最終週の動員ランキングは、2011年にテレビシリーズ放映開始、これまで3作品の劇場版が製作されてきた『魔法少女まどか☆マギカ』の13年ぶりの完全新作映画となる『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』が、オープニング3日間で動員53万4700人、興収9億4000万円を記録して初登場1位に。2013年に公開された前作『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語』の最終興収は20.8億円だったので、初週末だけでその約半分の興収をあげたことになる。もっとも、ウィークデイに入ってからは落ち着いた興行となっていて、興収の前作超えは確実な情勢ではあるものの、そこからの伸びは限定的になりそうだ。

 今回の『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』で異例だったのは、公式から期間を指定(公開から2週間)しての「ネタバレ防止のお願い」のアナウンスがされたこと。これまで『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズなどで、作品のファンダムが製作サイドの意図や他の観客を慮ってネタバレを自主的に避けるような動きはあったが、それが過度になると作品の広がり自体を阻害することにもなりかねないので、公式から事実上のネタバレ禁止令が出るというのは稀なケース。海外でも、例えばMCU作品では公開タイミングに出演俳優たちがジョークを交えてネタバレ禁止の動画をアップすることなどがあるが、そもそも海外の観客は公式発の「お願い」であってもそこまで厳密に守らないという前提がある。

 一方、日本の観客はただでさえネタバレに敏感で自主的に守る傾向があるのに、そこに公式からの「お願い」が加わると観客の「自主」性というより自警団的な「自治」を促すことにもなり得る。そのことは公式も十分にわかっていて、もしネタバレ投稿を見つけても「攻撃的なコメントはされないように」という注意書きもあるのだが、その小さい文字まで読んでくれる人ばかりではないだろう。また、ネタバレ論争に付きまとうのは「どこまでがネタバレか」という線引き問題。その線引きについて具体的に語ること自体がネタバレとされることもあるから、なかなか厄介だ。

 ひとまず、今回の公式からのネタバレ禁止期間は「2週間」。公開から2週間経って、まだ『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』がホットな作品であり続けていれば、今回の「ネタバレ防止のお願い」は成功と言えるのかもしれない。

■公開情報
『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』
全国公開中
キャスト:悠木碧、斎藤千和、喜多村英梨、野中藍、水橋かおり、阿澄佳奈、若山詩音、黒沢ともよ、加藤英美里
原作:Magica Quartet
総監督:新房昭之
脚本:虚淵玄(ニトロプラス)
キャラクター原案:蒼樹うめ
監督:宮本幸裕
キャラクターデザイン/総作画監督:谷口淳一郎
総作画監督:山村洋貴
異空間設計:劇団イヌカレー(泥犬)
絵コンテ/ビジュアル・コンセプトデザイン:古川知宏
ビジュアル・コンセプトデザイン:川田和樹
色彩設計:日比野仁
美術:内藤健/草森秀一
美術設定:大原盛仁
撮影監督:会津孝幸
編集:松原理恵
音楽:梶浦由記
音響監督:鶴岡陽太
アニメーション制作:シャフト
配給:ANIMEC
主題歌:FictionJunction「彼方」
©Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project
公式サイト:https://www.madoka-magica.com/wr/
公式X(旧Twitter):https://x.com/madoka_magica

『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/

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