『ちいかわ』の不憫さを際立たせるナガノの“意地悪センス” 映画版ならではの後味とは

※以下、『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』のネタバレを含みます。

 少し意地の悪い言い方かもしれないが、ちいかわが不憫な目に遭うほど面白さが増していく本作。では、公開から31日間で興行収入110億円を突破し、大ヒット上映中の『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』のちいかわはどうだろうか。

 島民を襲うセイレーンの討伐をなりゆきで引き受けることになったり、セイレーンに仲間たちを連れ去られてひとりぼっちになってしまったりと、劇場版でもちいかわの“不憫さ”は健在だ。そんなちいかわは終盤、偶然にも永遠の命が手に入る人魚を食べた犯人たちがわかってしまう。

 セイレーンを倒し一件落着の空気が流れるなか、ちいかわは犯人たちのもとへ向かい、罪を告発しようとする。すると、手をぎゅっと握り合い、深い絆を感じさせる犯人たち。その光景を見たちいかわは、ハチワレに心配されるものの、無言で首を横に振ってしまうのだった。

 犯人を突き止めたにもかかわらず真実を黙ってしまったちいかわは、船に乗って島を後にする最中も、罪悪感や後ろめたさといった歯切れの悪さが残ったに違いない。そして、観客として物語を追っていた私たちも、まるで共犯者になったかのような後味の悪さが残るのだ。

 『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』には、ちいかわを筆頭としたかわいらしいキャラクターたちが繰り広げるクスッとなるようなシーンがちりばめられている。一方で、観終わった後の筆者には、TVシリーズを観た際のような「ちいかわが可哀想だけど面白い」という感情はなかった。

 それは、本作で描かれた事件の“罪と罰”が、重く生々しい証拠だろう。“ダークさ”がじんわりと胸に広がる『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』は、TVシリーズとはひと味違った魅力を生み出している。

■公開情報
『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』
全国公開中
キャスト:青木遥(ちいかわ)、田中誠人(ハチワレ)、小澤亜李(うさぎ)、井口裕香(モモンガ)、内田雄馬(ラッコ)、淺井孝行(くりまんじゅう)、島袋美由利(シーサー)、春海百乃(古本屋)、最上嗣生(島二郎)、鈴木みのり(セイレーン)
原作・脚本:ナガノ
監督:及川啓
キャラクターデザイン:辻智子
コンセプトアート:橋本真樹
プロップデザイン:高妻匠
色彩設計:長井彩香
美術監督:眞﨑萌
CG監督:中野祥典
撮影監督:岡﨑正春
編集:高橋歩
音響監督:土屋雅紀 
音響効果:倉橋裕宗(オトナリウム)
音楽:トクマルシューゴ/上水樽力
アニメーションプロデューサー:溝口侃
アニメーション制作:サイピク
製作:川上洋一、古澤佳寛
エグゼグティブプロデューサー:松崎容子
プロデュース:今福太郎
プロデューサー:小峯雅隆、障子直登
宣伝プロデューサー:林原祥一、斎藤愛子、狩野裕明
製作幹事:QTORY inc.
配給:東宝
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