『8番出口』の映画化はなぜ成功したのか 現代の閉塞感と“異変”に向き合う二宮和也の変化
2025年に公開され、大きな話題を呼んだ映画『8番出口』が、8月28日の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で放送される。2023年にリリースされた同名のインディーゲームを原作とした本作は、ゲームにはなかったストーリー性が追加され、注目を集めた。最終興行収入は51.7億円と大ヒットを記録している。
日本国内のみならず海外でも高い評価を受け、第78回カンヌ国際映画祭ミッドナイトスクリーニングで上映された。北米公開時には、公開初週に興行収入140万ドルを記録し、初登場7位にランクイン。公開3週目の累計興収推計は326万ドルにも上っている。
そんな映画『8番出口』の魅力はどこにあるのだろうか。作品の世界観や主演を務めた二宮和也の演技に注目しながら解剖していきたい。
地下通路が暗示する現代社会の閉塞感
『8番出口』の舞台になるのは、日本のどこにでもありそうな地下通路だ。地下鉄で派遣先へ向かっていた主人公「迷う男」(二宮和也)は、「異変」を見つけなければ脱出できない無限ループにはまり込んでしまう。「異変を見逃さないこと」「異変を見つけたら、すぐに引き返すこと」「異変が見つからなかったら、引き返さないこと」「8番出口から出ること」という4つのルールに則って、正しく進むことができれば出口への数字がカウントアップされていき、最終的に8番出口にたどり着ける。
ここで注目したいのは、この地下通路の無機質な雰囲気だ。日本の、特に都市部に住む人たちにとっては、自分の日常にもありそうな景色。しかしそんな見慣れた景色に突然「異変」が現れると、違和感と恐怖を生む。この仕掛けは、原作のゲームの時点ですでに面白い着眼点だった。
これを映画に落とし込むにあたって、川村元気監督は「能のような【見立て】が出来ると思った」と語っている(※)。「例えばあの空間が人間の心の中で、そこで心に抱いている罪が可視化されていくのだとしたら」。私たちは普段さまざまな「異変」を見て見ぬふりをしている。映画冒頭で、主人公が赤ん坊連れの母親に怒鳴る男を見ても、なにも行動を起こさなかったように。世界では常に戦争が起こったり疫病が蔓延したり、災害に襲われたり、さまざまな「異変」が起きている。しかし私たちの多くはそれらを認識しつつ、行動を起こさない。そうした“見て見ぬふり”が罪として心のなかに蓄積していくと川村監督は考えたのだ。
こうした「異変」はスマホの画面上に猫動画や美容整形の広告、ダンス動画などに混じって現れ、私たちはそれらをただスクロールしていく。本当に気に留めるべき「異変」に気づかず、情報の無限ループにはまっているのだ。本作ではそれが地下通路のループに重なり、情報のカオスである現代社会の閉塞感を描き出している。