『風、薫る』直美の“自分の家族”との関係がほほえましい 出征に向かう吾郎との絆

NHK連続テレビ小説『風、薫る』第108話は、直美(上坂樹里)が“自分の家族”に向き合っていく姿が描かれた。
生後間もなく母親に捨てられ、牧師に育てられた直美は、家族の温かさを実感できず、家族の必要性さえも感じられないところがあった。だが、りん(見上愛)と出会い、りんの家族と交流を持ったことで少しずつ変化。そして吾郎(甲斐翔真)に惹かれ、“自分の家族”を持つまでに。直美が自分のことを「小川」と名乗ったり、「吾郎さん」と呼びかけたりするたびに嬉しくなる視聴者は多いことだろう。

吾郎の子をその身に宿し、もう一つの家族であるりんの家で吾郎のためにボタンつけをしていた直美は、第2の母親のような存在である美津(水野美紀)と話しながら自分を産んだ母・文(内田慈)のことを考えていた。まだ顔も知らないのにお腹に存在を感じるだけで“かわいい”と感じる我が子。文も同じ気持ちだったのだろうか。そんなことを美津に話しながら、直美はあることに気がついた。夕凪という名で女郎をしていた母は1人で直美を産んだのだ。今、吾郎が出生してしまったら自分もこの子を1人で産むことになってしまう。母と同じことを追体験できているという喜びと、なんの因果か同じ状況に陥っているという微かな不安。直美の心は静かに揺れ動いているのだった。

そんな不安を抱えていたからなのか、直美は何回か話に出ていた子の名付けで吾郎と揉めてしまう。そこで「なんとか戦場に行かない方法はないの?」直美の本当の気持ちが爆発。吾郎はいつでも自分に優しい。そんな彼が厳しい戦場で戦えて、生きて帰ってこれるんだろうか。直美がそう考えてしまうのは、吾郎の愛をしっかりと受け取っているからなのだが、この幸せな日々がずっと続いてほしいという願いは当たり前の願いだ。
しかし、吾郎はキッパリと「戦えるよ」と宣言。それは軍人だからでもあるが、「家族のためになら戦える」とも言った。吾郎が人一倍優しいのは事実だろう。戦地に赴くことだって怖くないと言えば嘘になるはずだ。だが、“家族”が戦う理由になる。直美も裁縫は大の苦手だった。だが、家族である吾郎のためを思うから時間がかかってもやるし、だんだんとできるようになってきたのだ。立場も置かれている状況も違うけれども、2人が家族を思って行動する気持ちは同じなのである。

また一歩、家族として絆を深めた吾郎と直美。「帰ってこなかったら許さないから」と泣きながら怒る直美を抱きしめながら、困ったように、でも嬉しそうに笑う吾郎が愛らしい。本当に直美のことを大切に思っていることが伝わってくる。
そんな中で、吾郎がひらめいた子の名前は「明」と書いて「あきら」。明るいことは沈んだ気持ちを朗らかにしてくれる。自分にとっても周りにとってもいいことだ。明るいお父さんに明るいお母さん、そして生まれてくる明るい赤ちゃん。その“明るい未来”を願って、春、出征が決まった吾郎を静かに見送った日となった。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK




















