甲斐翔真、デビュー10年目で掴んだ転機を語る 『風、薫る』で実感した“舞台経験の意味”

甲斐翔真、『風、薫る』で掴んだ転機を語る

 激動の時代を舞台に、主人公・一ノ瀬りん(見上愛)と大家直美(上坂樹里)が看護の道を切り拓いていくNHK連続テレビ小説『風、薫る』。直美と出会い、後に夫となる軍人・小川吾郎を演じているのが甲斐翔真だ。デビューから10年という節目に朝ドラ出演を果たした甲斐に、上坂樹里とのエピソードや朝ドラとの不思議な縁など、たっぷりと話を聞いた。

“明治時代の青年”ではなく“人である”ことを意識

――直美(上坂樹里)に対してかなり積極的にアプローチしていく吾郎ですが、彼の魅力はどんなところにあると感じていますか?

甲斐翔真(以下、甲斐):あそこまでまっすぐに人と向き合える人というのは、明治という時代でも珍しかったのではないかと思います。日本という国が変わり始めた時代の中で、人をしっかりと正面から見ることができる姿は、昔も今もとても美しいと感じます。直美に出会い、女性としてというよりは「人としてカッコいい」と感じ、信念を持ったその姿に心が動き、どっぷりと惚れていったのだと思います。僕自身もわりと諦めない心の持ち主だと自負しているので、そこは似ているかもしれません。

――明治時代を生きる青年を演じる上で、どのように気持ちを作っていったのでしょうか?

甲斐:時代背景や近衛師団のことなどはたくさん調べましたが、台本を読み込んでいくうちに、そこまで自分を「明治時代の人間だ」というところに落とし込む必要はないのかもしれないと思うようになりました。結局は「人である」ということを忘れないようにしたんです。江戸から明治に変わった瞬間って、僕からすると昭和から平成や令和に変わったような感覚だと思うんです。グローバル化やインターネットの普及で人と人との距離感が変化したように、時代の変化の狭間にいる青年という意味では、現代の僕と変わらないという結論に至りました。

――軍人としての所作や佐賀弁など、技術的な苦労もあったのではないでしょうか?

甲斐:近衛師団として天皇陛下を守ることで、国を守る。そして国を守ることで家族や大事なものを守るという、当時の軍人としての役割はしっかり意識しました。一方で、直美と話すときはその鎧が剥がれる瞬間がある。そういう細かい部分は心がけましたね。ただ、最初は本当に大変でした。クランクインの日にいきなり長台詞の佐賀弁のシーンがあって。お芝居をしながら、佐賀弁を気にしつつ、軍人としての所作も気にしなければならなかったので、すごくいろいろな触角が必要で苦労しました。

――台所で歌を歌うシーンや、料理をするシーンもありましたね。

甲斐:「埴生の宿」を歌わせていただいたのですが、この5年間ミュージカルに出演してきた中で、「上手く歌うな」と言われたのは初めてでした(笑)。吾郎は軍人ですしプロではないので、今風のポップスが混ざった現代の発声ではなく、当時の発声法に近づける特訓をしました。料理に関しては、今回の役作りで8キロほど体重を減らしたこともあり、塩分などを調節するために自分で作っていたんです。まさか劇中に料理のシーンがあるとは思っていなかったので、自分の人生と吾郎の人生がリンクした瞬間でしたね。

――直美を演じる上坂樹里さんとの共演の感想をお聞かせください。

甲斐:初めてお会いしたときは「可憐で華のある方」という印象でしたが、共演を重ねるにつれ、固い芯の通った方なのだと気づかされました。それからお芝居を続けていくうちにも、なんだかわからない“阿吽の呼吸”のようなものが生まれていって。きっとそれは、役が導いてくれたものだと思います。カメラの前以外では、お互いにそこまで話しかけるタイプではないのですが、前室でたわいもない会話を交わすことがあって。それが重い空気のシーンを撮るときに活きたりと、上坂さんとの関係性に助けられた部分はとても大きいです。

――直美と上坂さんが重なる部分も大きいように思えます。

甲斐:まさにそうですね。ご本人は苦労されたとおっしゃっていましたが、僕の中では当て書きのようなイメージというか、『風、薫る』の大家直美役に選ばれるべくして選ばれたんじゃないかと思わされるくらいに、説得力のある直美でした。

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