ルイ・レテリエによるジャンル映画 『ザ・ラストハウス』が映し出すアメリカ社会の縮図

『ザ・ラストハウス』とアメリカ社会の縮図

 現在公開中の『オークストリートの異変』は、アメリカの都市郊外のマイホームに住む家族たちが、不可思議な現象によって恐竜の襲撃からのサバイバルを余儀なくされるという内容の作品だ。そんな話題作の同時期に、同様の自宅引きこもり型、ファミリーサバイバル作品がNetflixから配信された。『ザ・ラストハウス』である。

 本作『ザ・ラストハウス』の主人公は、シアトル郊外で暮らすアン(グレタ・リー)とその夫ジェイソン(ワグネル・モウラ)、そしてまだ小さい息子と娘。ところがある日、激しい雨が降り始めると、家の扉や窓が何かに封じられ、外へ出られなくなってしまう。近隣の家でも同じ異変が起きていることを知るが、外部との連絡は途絶え、状況はまったく分からない。

『ザ・ラストハウス』

 家にある食料や生活物資には限りがあり、時間が経つほど状況は厳しくなっていく。外の通りを不気味な何かが徘徊するという脅威にさらされながら、家族は家の内部から逃れられずに生活を続け、その関係にも変化が生じ始める。

 サンドラ・ブロック主演の『バード・ボックス』(2018年)や、『クワイエット・プレイス』(2018年)などに代表されるように、幸せな一家が超常的な存在に脅かされる内容のホラーサスペンスは、現在のさまざまな企画の核となっているところがある。その後、『#生きている』(2020年)や『ブリック』(2025年)、『28年後...』シリーズなど、コロナウイルスのパンデミックによるロックダウンを想起させる映画も増えてきた。

 そういう意味では、本作もまたその系譜に連なる作品だといえよう。監督は、『トランスポーター』シリーズをはじめ、『グランド・イリュージョン』シリーズなど、アクションやスペクタクルを中心とした作品を多く手がけてきた監督ルイ・レテリエ。近年では超大作『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』(2023年)を監督し、現在はシリーズ最終作でも監督を務める予定であることが報じられている。本作は、そんなヒットメイカーによる、狙い澄ましたジャンル映画なのである。

『ザ・ラストハウス』

 とはいえ、レテリエ監督が大規模なアクションから一転して、ほとんど一軒の家の中だけで物語を展開させるという題材を選んだのは面白い。そこで表現された屋内は、単なる恐怖の舞台というだけではない。体操をしたり、勉強を教えたり、いまある環境でできることを探しながら、外の社会で行っていた生活を少しずつ家の内部へ移していく、家族の姿が描かれるのだ。さらに彼らは、ハンティングの仕組みや家庭菜園を作り上げ、食料を確保するまでになっていく。

 こうした描写は、パンデミックの経験とも重なる部分がある。外出が制限されたとき、多くの人は家のなかでできる限り生活や仕事、教育を完結させようと努めた。ここでは、それがさらに極端な形で描かれる。家の中で楽しむだけではなく、生活を維持するために必要なものまで、全て内部でまかない、自給自足のサイクルを作り上げる。家族は外部から隔離され、生きるためのコミュニティを形成し直したことで、それそのものが一つの小さな社会のようになっていくのである。

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