『風、薫る』第17週は“直美”上坂樹里の集大成に 「あなたならきっと大丈夫」に込めた願い

NHK連続テレビ小説『風、薫る』第17週「脈動」は直美(上坂樹里)の週だ。ここまで一つの軸として描かれていた直美の生い立ち、夕凪をめぐる母親との物語が完結するからだ。7月24日放送後の『あさイチ』(NHK総合)「プレミアムトーク」に上坂樹里がゲスト出演したことはその象徴と言える。
直美の母親である文(内田慈)は、劇中では最後まで自分が母親であることは告げなかった。寛太(藤原季節)の手を借りて直美が文と向かった先は海の見える熱海の神社・浦崎八幡。「一つだけしたいこと」として直美にお願いした最後の望みだ。

浦崎八幡は安産祈願で有名な神社。「ここにきた頃が一番幸せだった」と文は懐古する。“ここにきた頃”のその後、文は一緒になった男に逃げられ、女郎屋から逃亡した身重の体では働くこともできず、せめて子どもだけはと直美を横浜の教会に置いていくことになるからだ。
そんなみなしごの直美が立派な看護婦となり、今自身を看護し、支えてくれている。その努力を讃え、文は直美に「私のような者とはまるで違う。あなたならきっと大丈夫」と告げる。これが劇中では文の最後の言葉、姿となった。

「プレミアムトーク」にVTR出演した内田慈は、当初は「きっといいご縁があるでしょう」というセリフだったのが、現場での打ち合わせの末に「あなたならきっと大丈夫」に変更になったことを明かしている。それは結婚という縛られた幸せの形ではなく、直美を信頼し背中を押す自由な姿だ。文が直美に母親であることを告げなかったことはそれぞれの解釈の仕方があるが、内田は直美を個として尊重する、自分を大切に生きていってほしいという未来に開いた母としての思い、として受け取っていたようだ。それは拾った人に愛され育ててもらいたかったから、という理由から名付けなかったという文の思いと通ずる部分があるようにも思える。
驚くのは、上坂は文が直美の母親であることを第17週の台本を読んで知り、内田はキャスティングされた時点で告げられていたということだ。それはまるで直美と文の関係性とほぼ一致しており、役作りとしてはこの上ない。第6週で直美が瑞穂屋を訪れた、文との初対面のシーンをもう一度見直したくなる。

文はどこか不思議で、意地っ張りな人物だった。直美を急に冷たく突き放しては、卯三郎(坂東彌十郎)に託すかたちで直美への看護費という名の遺産を残していた。直接的な言葉ではなく行動で母としての姿を示していたのかもしれない。
また、第17週全体で文を通じて直美にとっての家族と呼べる存在を浮かび上がらせていたのも印象的だ。文との最期の時間を過ごすためのキーパーソンだったりん(見上愛)に、直美にとっての2人目の母親である美津(水野美紀)、ただただ寝顔が愛おしい環(英茉)。ぶどう酒で献杯し、文の形見である髪飾りを結んだ花瓶に花を生ける姿は新たな一歩を踏み出す直美と家族の形に見える。もしかしたら今後、直美にとっての家族になるかもしれない寛太や吾郎(甲斐翔真)との距離感も確実に変化している。第17週のなかで直美が吾郎、そして文へと告げたそれぞれの「ありがとう」も忘れられない。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK























