『ブラッサム』初回は“幸運の種”の先行きが気になる展開 久しぶりの“ダメ親父”渡部篤郎も

『ブラッサム』幸運の種の先行きが気になる

「花咲婆さんになりたい」

 85歳の葉野珠(加賀まりこ)が、原稿用紙にそう書きつける。モデルとなった作家・宇野千代は、生前、幸運の種をまく「花咲婆さんになりたい」になりたいと語っていたという。

 NHK連続テレビ小説『ブラッサム』は、明治に山口県岩国で生まれた珠が、激動の時代を生き、書くことを通して自分の道を切り開いていく物語だ。

 第1回の舞台は、まず昭和57年(1982年)の東京・青山。新聞で自伝的小説『生きて行く私』を連載中の珠は、取材のため故郷の岩国へ向かう時間が迫っても原稿用紙から離れられず、秘書の優子(松たか子)に「どうしても書かずにおれないんですね」と少し呆れたように言われる。

 加賀まりこと松たか子。初回から豪華な顔合わせだが、それだけでなく、2人が醸し出す空気も楽しい。出発を急かす優子には珠への敬意があり、珠も優子には気兼ねなく「ちょっと待ってて」と言う。先生と秘書でありながら、友人同士のように言葉を交わす2人がチャーミングだ。

 主演の石橋静河は『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 ブラッサム Part1』(NHK出版)のインタビューで、珠の長い人生の先に加賀と松が待っていることが、珠として生きる「絶対的な安心感」になっていると語っている。加賀が演じる珠の朗らかさと、松が演じる優子の落ち着き。2人の掛け合いを初回から見られたことで、石橋が語った安心感を、視聴者としても実感した。

 第1回の劇中で石橋の姿は見られないが、珠が原稿に記した「幸福とは、人が生きて行く力のもとになることだ」という一文には、その声が重なる。オープニングでは、満開の桜の下で珠が軽やかに舞う。主題歌「咲き誇れ」とともに、明るく前を向く彼女の姿が印象に残った。

 オープニングを挟み、物語は明治41年(1908年)の岩国へ遡る。10歳の珠(村上蘭)は、弟と妹を連れてお使いに出ていた。疲れて座り込んだ弟には桜を見せて「綺麗じゃ。元気になるわぁ」と声をかける。背負った妹がおむつを濡らしても、「こりゃあ温うてええわ」と笑う。弟を元気づけ、ハプニングも笑い飛ばす珠の前向きさに、冒頭で出会った85歳の珠が少し重なった。

 しかし、父・清治(渡部篤郎)が帰宅すると、家の空気は一変する。家族総出で三つ指をついて迎えても、清治は冷たく一瞥するだけ。町では「無頼者」と呼ばれ、馬を荒々しく走らせて道行く人にも怒鳴る清治だが、その傍若無人ぶりは家の中でも変わらない。雨が降り始めても、清治は珠にカナリアの餌を買いに行くよう命じる。しかも、以前草履を濡らして駄目にしたからと、裸足で行かせるのだ。久しぶりに朝ドラに現れた“ダメ親父”は、帰ってくるだけで家族を緊張させる、恐ろしい父でもあった。

 リョウ(国仲涼子)は泥だらけで帰ってきた珠の足を、丁寧に拭く。清治とは対照的に、珠を「珠様」と呼んで大切にする、優しい母親だ。珠の実母は珠が2歳のときに亡くなっており、リョウは継母である。珠はリョウが大好きだが、血のつながらない自分をなぜこれほど愛してくれるのか、少し分からない。その不安を抱えたまま、「お母を本当の母のように、大好きです」と語るところで、第1回は終わった。
 
 85歳の珠は「花咲婆さんになりたい」と書いた。その願いにつながるように、10歳の珠にも、周囲に幸運の種をまくような明るさがある。だが、その日常には清治への恐怖や、リョウの愛情に対する不安もある。オープニングで見た晴れやかな珠は、どんな日々を経てあの姿になるのか。第1回は、珠の人生の先を知りたくなる15分だった。

■放送情報
2026年度後期 連続テレビ小説『ブラッサム』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜から金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:石橋静河、加賀まりこ、松たか子、国仲涼子、渡部篤郎ほか
作:櫻井剛、小松與志子
主題歌:YOASOBI
制作統括:村山峻平、櫻井壮一
プロデューサー:大野陽平
演出:盆子原誠、中泉慧、佐藤玲衣、田中陽児、小林直毅、野田雄介
写真提供=NHK

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