『ちいかわ』キャラクター設計の妙 関係性がファンタジーにリアリティを宿す理由とは

 多くの人が待ちに待った『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』が、いよいよ7月24日に封を切る。今や国民的な人気作品となったイラストレーター・ナガノが描く漫画『ちいかわ』初の劇場版アニメとあって、すでに歴代興行収入ランキングを塗り替えそうな予感で胸がいっぱいだ。

 『ちいかわ』は、「こういう風になってくらしたい」というナガノの願望から生まれた小さくてかわいいキャラクターたちが繰り広げる物語。2020年にX(旧Twitter)で連載がスタートし、講談社発行の単行本は8巻まで発売されている(※2026年7月現在)。2022年4月に『めざましテレビ』(フジテレビ系)内でアニメがスタートしたことでより人気に火がつき、2025年夏には作品世界を楽しめる大型体験施設「ちいかわパーク」がオープンした。

 今回の映画は、2023年3月から11月にかけてXで投稿されていた「セイレーン編」が原作となっている。エンタメ性とメッセージ性を両立させたストーリーはもちろんのこと、メインキャラクターが大集結することもあり、作中屈指の人気エピソードだ。子ども向けの作品と侮るなかれ。大人も必ずや、観終わった後に充足感を得られるに違いない。

 もともと『ちいかわ』は子どもにターゲットを絞るのではなく、幅広い年齢層の読者を想定して緻密に作り込まれた作品に思える。特に感心させられるのは、一面的ではないキャラクター造形と関係性のバランスだ。まずは、ちいかわとハチワレのコンビを例に挙げてみよう。

ちいかわ 公式Xより

ちいかわ 公式Xより

 ちいかわは臆病で傷つきやすく、ちょっとしたことですぐに泣いてしまう。そんなちいかわにとって、親友であるハチワレは精神的支柱だ。パックのお寿司を落としてぐちゃぐちゃにしてしまったときも、すかさず「混ぜちゃってさーお湯かければいいじゃん」と切り替え、“おっきい討伐”でちいかわが怖くて泣いてしまったら、「ダメだったらさーリタイアすればいいよね」と笑顔で励ますハチワレ。そのポジティブ精神と思いやりに、ちいかわは何度助けられたことだろう。

ちいかわ 公式Xより

ちいかわ 公式Xより

 一方で、ハチワレは楽観的でちょっぴり抜けているところも。例えば、2人が一緒に訪れた三ツ星レストランで危うく店員に食べられそうになったとき、真っ先に違和感に気づいたのはちいかわだった。気が弱い分、危機察知能力はちいかわの方が上で、ハチワレは意外とピンチが迫っていてもぽけっとしていることが多い。また、ちいかわはここぞというときの判断力と勇敢さが素晴らしく、たびたびハチワレを救っている。支える側と支えられる側が固定されず、その時々で立場が入れ替わるからこそ、彼らのキャラクターや関係性には奥行きが生まれるのだ。

ちいかわ 公式Xより

ちいかわ 公式Xより

 2人と仲の良いうさぎも一見すると、行動が予測不能で独特の奇声を発するだけのエキセントリックなキャラクターに思えるかもしれない。だが、戦闘能力と「草むしり検定2級」を保持する頭脳の高さであらゆるピンチをくぐり抜ける頼もしいところ、ドライなようでちいかわたちが辛いときにはそっとそばにいてくれる仲間思いなところなど、魅力たっぷり。単なるコメディリリーフではなく、ちいかわとハチワレにない強さを持つ存在として、3人の関係性に絶妙なバランスをもたらしている。

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