『パイレーツ・オブ・カリビアン』伝説の第1作 ジョニーデップの“常識はずれ”の役作りとは
7月18日の『土曜プレミアム枠』(フジテレビ系)にて、『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』(2003年)が放送される。世界興行収入で約6億5400万ドルという大ヒット(※1)。その後もシリーズ化されて計5作が作られ、フランチャイズ累計45億ドル以上を叩き出した(※2)、エポックメイキングな超大作だ。
改めて観直すと、ベースとなるプロットが驚くほどよくできていることに気づかされる。鍛冶屋の青年ウィル・ターナー(オーランド・ブルーム)と、総督の娘エリザベス・スワン(キーラ・ナイトレイ)の身分違いのロマンス。不死の海賊というゴシック・ホラーの要素。ウィル自身の血脈に隠された秘密。海軍提督ジェームズ・ノリントン(ジャック・ダヴェンポート)の執拗な追跡劇。寄せ集めのならず者たちによる、チームものとしてのカタルシス。エンタメの王道を煮詰めたような構成が、観る者の心を一瞬で鷲掴みにする。
だがこの映画の最大の魅力は、やはりジョニー・デップ演じるジャック・スパロウに尽きるだろう。金歯をのぞかせ、目の周りを黒のアイライナーで塗りつぶし、顔の周りでビーズを揺らす、エキセントリックな風貌。かつてブラックパール号の船長であったものの、部下に反乱を起こされて船を奪われ、たった一人で沈みかけの小さなボートに乗って登場するこの男は、常に酔っ払っているかのように千鳥足で歩き、掴みどころのない飄々とした態度を崩さない。
常軌を逸したビジュアル設定と演技アプローチは、当初ディズニーのお偉方を激しいパニックに陥れた。撮影されたラッシュ映像を見た幹部たちは、「彼はいったい何をやっているんだ!」「酔っ払っているのか!」と困惑し、大作映画が台無しになると危惧したという。
しかし、ゴア・ヴァービンスキー監督が防波堤となってスタジオの干渉を跳ね除け、デップのビジョンを守り抜く(※3)。不安がる幹部に向けてデップ自身も、「僕を信じてくれ、もし信じられないなら代役を立ててくれ」と言い放った(※4)。結果的に、このアプローチは大正解。型破りな海賊像は世界中の観客を熱狂させ、ジャック・スパロウはディズニー映画の歴史において屈指の人気キャラクターへと上り詰めたのである。
敵も味方も翻弄する、予測不能なトリックスター。この常識破りキャラの骨格には、現代のロックスターの精神性が息づいている。デップがインスピレーションの源に選んだのは、ザ・ローリング・ストーンズのギタリスト、キース・リチャーズ。決して権威に迎合しない反逆精神、圧倒的な色気。デップは、大海原を生きる海賊の自由さをロックンロールのカリスマ性と重ね合わせ、キースの反骨スタイルをジャックのキャラクターに落とし込んだ。(※5)
さらにそこへ、アニメーション『ルーニー・テューンズ』に登場するスカンクのキャラクター、ペペ・ル・ピューの要素をトッピング。ペペはメス猫からどんなに露骨に嫌がられても、「彼女は照れ屋なだけだ」と自分に都合よく解釈する、超ポジティブ&空気読めないキャラ。デップは絶大な自己肯定感をブレンドすることで、無敵のメンタリティを完成させた。(※6)