『風、薫る』ヒデ、フユ、千佳子らりんを成長させた人たち 試練の先にある看護婦の姿勢

『風、薫る』千佳子らりんを成長させた人たち

永田フユ(猫背椿)

 千佳子の手術で、りんに大きな衝撃を与えたのが看病婦のフユ(猫背椿)である。手術当日、フユは医師たちの動きを読みながら、迷いなく介助をこなしていく。学校で学んだ知識だけでは身につかない、現場で積み重ねてきた技術の正確さを目の当たりにしたりんは、フユに手術介助を教えてほしいと頼むことになる。

 しかしフユは、教える代わりにお金を求める。看護を志ある仕事として捉えていたりんにとって、その言葉は戸惑いを覚えるものだったはずだ。だが、やがてりんと直美(上坂樹里)は、フユの夫・康介(じろう)が怪我で働けず、彼女が生活を支えていることを知る。フユは、看護が人を救う仕事であると同時に、生きるための仕事でもあることをりんに突きつけた。理想だけでは現場に立ち続けられないという現実を知ったことで、りんの看護婦としての視野は確かに広がっていたはずだ。

土居ヒデ(池田朱那)

 そして現在、りんの前に新たな試練として立ちはだかっているのが、ヒデ(池田朱那)だ。かつて教わる側だったりんは、今や看護婦取締として学生たちを導く立場になった。患者のために休む間もなく動き、現場では迷わず指示を出し、誰よりも懸命に働く。りんにとってそれは、看護婦として当然の姿勢だったのだろう。だが、ヒデの目には、りんが当たり前のように自分を追い込み、患者のためにすべてを差し出そうとする姿が、重圧として映っていたのかもしれない。

 りんのようにならなければいけないのか。そこまで自分を削らなければ、この仕事は務まらないのか。ヒデが辞めてしまったことで、りんは外科の看護婦取締を降ろされ、一看護婦として現場に戻ることになる。ヒデとの出来事は、りんにとって痛みを伴う挫折だったが同時に、自分が信じてきた看護のあり方を、もう一度見つめ直すきっかけにもなっている。患者のために尽くすだけではなく、同じ道を歩もうとする人たちに何を伝え、どう支えていくのか。いくつもの試練を越えてきたりんが、この経験を経てどんな看護婦へと変わっていくのか。その変化こそ、今後の物語の大きな見どころになりそうだ。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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