『風、薫る』りんはなぜ共感されにくい? 視聴者の賛否を分ける“鈍感”ヒロイン像

『風、薫る』賛否を分ける“鈍感”ヒロイン像

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』の放送開始から3ヶ月が過ぎ、ついに物語は折り返し地点を迎えた。本作は、日本に看護師という職業を確立させた大関和と鈴木雅をモチーフに描く一ノ瀬りん(見上愛)と大家直美(上坂樹里)の友情物語。生まれも育ちも大きく異なる2人だが、ひょんなことから大山捨松(多部未華子)に導かれて一緒に看護の道を歩むことになる。

 前半を締めくくる第13週で、2人はついに看護婦見習いから看護婦となった。劇中では、帝都医科大学附属病院で看護婦取締として働き始めた彼女たちが、看護婦の就業規則を考える姿も。「患者の家族から金品は受け取らない」「勤務は日勤と夜勤の交代制」など、現代に通じる看護の礎が築かれていく過程を見るのは面白い。

 また、りんに思いを寄せる幼なじみの虎太郎(小林虎之介)が再登場し、同じくりんに好意を抱く小説家志望の島田(佐野晶哉)との三角関係が勃発。一方、直美は患者の友人である陸軍二等軍曹の小川(甲斐翔真)からアプローチを受ける。序盤は視聴率が伸び悩んでいた本作だが、仕事が本格化し、それぞれの恋愛事情も大きく進展していくにつれて世間からの注目度も高まっているように感じる。だが、依然としてSNS上では厳しい意見も散見される。特に気になるのは、ヒロインの一人であるりんのキャラクターに関して大きく賛否が分かれているところだ。

 父・信右衛門(北村一輝)は初回の時点で農家に転じていたが、栃木県の小藩の元家老で、母の美津(水野美紀)はそれを誇りに娘たちを良家へ嫁がせることを目標としていた。しかし、りんは女性の人生の“上がり”が「奥様」一択なことに疑問を抱いており、一度は家族のために結婚の道を選ぶも、酷い夫から逃げるようにして娘の環(英茉)と東京へ出る。そして、自立するために、まだ看護の概念すら存在していなかった日本で職業看護婦を目指すのだ。古い価値観や固定観念に囚われない生き方や、おっとりしているようで、意外と芯が強くちょっぴり頑固なところは『虎に翼』(2024年度前期)の寅子(伊藤沙莉)を彷彿とさせる。であれば、寅子のように視聴者が応援したくなるキャラクターになってもいいはずなのに、なぜりんへの風当たりは強いのだろうか。

 一つは、りんが受け身に見えてしまうことが原因だろう。身一つで上京したりんだが、たまたま出会った舶来品店『瑞穂屋』を営む卯三郎(坂東彌十郎)に助けられ、あっさり住む場所と働き口が見つかる。「リターンのない取引はしない」というのが、卯三郎の信条。つまり、りんは彼に未来の可能性を見出されたわけだが、その理由がはっきりとしない。「双六の目から外れた人も生きていけるように」と社会の変革を望むりんに関心を抱いたのかもしれないが、見ず知らずの人間を住み込みで雇うだけの動機としては少々弱い気がしてしまう。

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